クルミのアトリエ クルミのアトリエ TOPへもどる
  1. トップページ
  2. コラム
  3. 統合失調症で ...

統合失調症で障害年金を受給する方法|申請手続き完全ガイド

2025.10.27 精神科訪問看護とは

統合失調症と診断された方やそのご家族にとって、障害年金は経済的な安定を得るための重要な制度です。しかし「申請方法が分からない」「働いていると受給できないのでは」という不安から、申請を躊躇される方も少なくありません。

本記事では、統合失調症での障害年金申請について、3つの受給要件から障害認定基準、申請手続きの流れまで詳しく解説します。診断書作成のポイントや病歴申立書の書き方、就労しながらの受給可能性、実際の受給事例もご紹介。適切な準備により、多くの方が障害年金を受給できる可能性があります。

障害年金とは?統合失調症の方が知っておくべき基本知識

 

障害年金は、病気や障害により日常生活や就労に制限がある方に支給される公的年金制度です。統合失調症は障害年金の対象疾患であり、症状の程度により障害基礎年金または障害厚生年金を受給することができます。障害年金は、経済的な安定を提供し、治療に専念できる環境を整える重要な社会保障制度です。しかし、制度の存在を知らなかったり、申請方法が分からなかったりして、受給できるはずの方が申請していないケースも多く見られます。

障害年金には、障害基礎年金と障害厚生年金の2種類があります。初診日に国民年金に加入していた場合は障害基礎年金、厚生年金に加入していた場合は障害厚生年金の対象となります。障害基礎年金は1級と2級があり、障害厚生年金は1級から3級まであります。統合失調症の場合、症状の程度や日常生活への影響により等級が決定され、等級に応じた年金額が支給されます。

障害年金の受給により、統合失調症の患者さんは経済的な不安から解放され、治療に専念することができます。また、就労が困難な状態でも一定の収入が確保されることで、生活の質を維持することが可能となります。家族の経済的負担も軽減され、長期的な治療計画を立てやすくなります。統合失調症と診断された方は、早めに障害年金の申請を検討することが重要です。

障害年金における3つの受給要件

障害年金を受給するためには、「初診日要件」「保険料納付要件」「障害状態該当要件」の3つの要件をすべて満たす必要があります。これらの要件は厳格に審査されるため、事前に十分な準備と確認が必要です。統合失調症の場合、特に初診日の特定が難しいケースがあるため、注意が必要です。要件を満たさない場合は不支給となるため、申請前に各要件について詳しく理解しておくことが重要です。

3つの要件のうち、一つでも満たさない場合は障害年金を受給することができません。しかし、要件を満たしているかどうかの判断は複雑な場合があり、専門的な知識が必要となることもあります。自分で判断が難しい場合は、年金事務所や社会保険労務士などの専門家に相談することをお勧めします。

また、要件を満たしていても、提出書類に不備があったり、症状の記載が不十分だったりすると、本来受給できるはずの障害年金が不支給となることもあります。そのため、申請書類の作成には細心の注意を払い、必要に応じて専門家のサポートを受けることも検討すべきです。

初診日要件

初診日要件とは、障害の原因となった傷病について初めて医師の診療を受けた日(初診日)が、公的年金制度に加入している期間中であることを求める要件です。統合失調症の場合、初診日は精神科を初めて受診した日となりますが、実際にはもっと前に内科や心療内科を受診していることもあり、その場合はそちらが初診日となる可能性があります。初診日の特定は障害年金申請において極めて重要で、初診日により加入していた年金制度が決まり、受給できる年金の種類が決定されます。

初診日を証明するためには、「受診状況等証明書」という書類が必要です。初診の医療機関でこの証明書を作成してもらいますが、カルテの保存期間(通常5年)を過ぎている場合や、医療機関が廃院している場合は、証明書の取得が困難になることがあります。その場合は、次に受診した医療機関での証明書や、診察券、領収書、お薬手帳などの参考資料を提出することで初診日を証明する必要があります。

20歳前に初診日がある場合は、保険料納付要件は問われず、20歳に達した時点で障害基礎年金の請求が可能となります。ただし、この場合は所得制限があり、一定以上の所得がある場合は年金が減額または支給停止となることがあります。統合失調症は思春期から青年期に発症することが多いため、20歳前障害の対象となるケースも少なくありません。

統合失調症の初診日を特定する際の注意点

統合失調症の初診日特定には特有の難しさがあります。統合失調症は緩徐に発症することが多く、最初は不眠、不安、集中力低下などの非特異的な症状で内科や心療内科を受診することがあります。後に統合失調症と診断された場合でも、これらの受診が初診日となる可能性があるため、過去の受診歴を詳細に確認する必要があります。

また、統合失調症の前駆症状として、うつ状態や適応障害などと診断されていることもあります。これらの診断で治療を受けていた場合、その初診日が統合失調症の初診日として認定される可能性があります。そのため、精神科以外の受診歴も含めて、慎重に初診日を特定する必要があります。

初診日の証明が困難な場合は、「第三者証明」という方法もあります。これは、初診日頃の受診状況を知っている第三者(家族以外)2名以上から証明してもらう方法です。ただし、第三者証明だけでは不十分な場合もあり、他の参考資料と組み合わせて初診日を証明する必要があります。初診日の特定と証明は、障害年金申請の成否を左右する重要なポイントであるため、十分な準備が必要です。

保険料納付要件

保険料納付要件とは、初診日の前日において、一定期間以上の保険料を納付していることを求める要件です。具体的には、初診日の前日において、初診日の属する月の前々月までの被保険者期間のうち、保険料納付済期間と保険料免除期間を合わせた期間が3分の2以上あることが必要です。または、初診日において65歳未満であり、初診日の属する月の前々月までの直近1年間に保険料の未納がないことでも要件を満たします。

統合失調症の患者さんの中には、症状により就労が困難となり、保険料の納付が滞っているケースもあります。しかし、保険料納付要件は初診日の前日時点で判断されるため、初診日以降に保険料を納付しても要件を満たすことはできません。そのため、体調不良を感じたら早めに受診し、保険料の納付状況を確認することが重要です。

保険料の免除制度を利用していた期間も、納付要件の計算に含まれます。経済的に困難な場合は、保険料免除申請を行うことで、将来の障害年金受給権を確保することができます。また、学生納付特例制度を利用していた期間も要件の計算に含まれますが、追納していない場合は年金額の計算には反映されません。保険料納付要件は複雑な計算が必要な場合があるため、年金事務所で確認することをお勧めします。

障害状態該当要件

障害状態該当要件とは、障害認定日(初診日から1年6ヶ月を経過した日)において、法令に定める障害の程度に該当していることを求める要件です。統合失調症の場合、日常生活能力の程度や就労状況などを総合的に評価して、障害等級が決定されます。障害認定日に障害状態に該当しない場合でも、その後症状が悪化した場合は、事後重症請求により障害年金を請求することができます。

障害状態の評価は、主治医が作成する診断書に基づいて行われます。診断書には、症状の内容、日常生活能力の判定、日常生活能力の程度、就労状況、治療内容などが詳細に記載されます。統合失調症の場合、陽性症状(幻覚、妄想)、陰性症状(意欲低下、感情鈍麻)、認知機能障害などの症状が、日常生活にどの程度影響を与えているかが重要な評価ポイントとなります。

障害等級は、1級が「日常生活の用を弁ずることを不能ならしめる程度」、2級が「日常生活が著しい制限を受けるか又は日常生活に著しい制限を加えることを必要とする程度」、3級(障害厚生年金のみ)が「労働が著しい制限を受けるか又は労働に著しい制限を加えることを必要とする程度」と定められています。統合失調症の症状と日常生活への影響を正確に診断書に反映させることが、適切な等級認定を受けるために重要です。

統合失調症における障害認定基準

統合失調症の障害認定は、「国民年金・厚生年金保険障害認定基準」に基づいて行われます。精神障害の認定基準では、統合失調症は「統合失調症、統合失調症型障害及び妄想性障害」として分類され、症状の内容、日常生活能力、就労状況などを総合的に評価して障害等級が決定されます。認定基準を理解することで、自分がどの等級に該当する可能性があるか、ある程度予測することができます。

統合失調症の障害認定では、単に診断名だけでなく、実際の症状が日常生活や就労にどの程度影響を与えているかが重視されます。幻覚や妄想などの陽性症状が活発な時期だけでなく、陰性症状や認知機能障害により日常生活に支障がある場合も、障害年金の対象となります。症状の程度は変動することがあるため、申請時点での状態を正確に評価することが重要です。

また、統合失調症の障害認定では、治療状況も考慮されます。適切な治療を受けているにもかかわらず症状が改善しない場合や、薬物療法の副作用により日常生活に支障がある場合も、障害認定において考慮される要素となります。定期的な通院と服薬の継続は、障害年金受給の前提条件でもあるため、治療を中断しないことが重要です。

「精神の障害に係る等級判定ガイドライン」とは?

「精神の障害に係る等級判定ガイドライン」は、精神障害の障害年金認定における地域差を是正し、公平な認定を行うために2016年9月から導入されました。このガイドラインでは、診断書に記載される「日常生活能力の判定」と「日常生活能力の程度」の評価を数値化し、その組み合わせにより障害等級の目安を示しています。統合失調症の障害認定においても、このガイドラインが重要な判断基準となっています。

「日常生活能力の判定」は、7つの項目(適切な食事、身辺の清潔保持、金銭管理と買い物、通院と服薬、他人との意思伝達及び対人関係、身辺の安全保持及び危機対応、社会性)について、4段階で評価されます。各項目の評価点を合計し、平均点を算出します。「日常生活能力の程度」は、全体的な日常生活能力を5段階で評価するものです。

ガイドラインでは、これらの評価の組み合わせにより、障害等級の目安が示されていますが、あくまでも目安であり、最終的な等級決定は総合評価により行われます。就労状況、入院歴、症状の経過、治療内容、家族の支援状況など、様々な要素を考慮して等級が決定されます。ガイドラインを理解することで、自分の状態がどの程度の等級に該当する可能性があるか、ある程度予測することができます。

障害等級の目安

ガイドラインによる障害等級の目安は、「日常生活能力の判定」の平均値と「日常生活能力の程度」の組み合わせにより決まります。例えば、日常生活能力の判定の平均が3.5以上で、日常生活能力の程度が(5)「身のまわりのことはかろうじてできるが、日常生活は困難で、常時援助が必要」の場合は、1級の可能性が高くなります。

2級の目安としては、日常生活能力の判定の平均が2.5以上3.5未満で、日常生活能力の程度が(4)「日常生活における身のまわりのことも、多くの援助が必要」の場合などが該当します。統合失調症で就労している場合でも、職場での配慮を受けていたり、就労が症状に悪影響を与えている場合は、2級に認定される可能性があります。

3級(障害厚生年金のみ)の目安は、日常生活能力の判定の平均が2.0以上2.5未満で、日常生活能力の程度が(3)「日常生活における身のまわりのことはおおむねできるが、時に応じて援助が必要」の場合などです。ただし、これらはあくまでも目安であり、実際の認定では個別の事情が考慮されます。症状の変動が大きい場合は、悪い時の状態を基準に評価することが重要です。

総合評価の際に考慮すべき要素

障害等級の決定では、ガイドラインの目安だけでなく、様々な要素を総合的に評価します。統合失調症の場合、特に重視される要素として、現在の症状の内容と程度、症状の経過と予後、就労状況、日常生活状況、社会的な適応状況などがあります。これらの要素を診断書や病歴・就労状況等申立書に適切に記載することが、適正な等級認定を受けるために重要です。

就労状況については、一般就労をしている場合でも、その内容や職場での配慮の有無が考慮されます。障害者雇用での就労、短時間勤務、職場での特別な配慮(業務内容の制限、休憩時間の配慮など)を受けている場合は、それらの事情を詳細に記載する必要があります。また、就労により症状が悪化している場合や、無理をして就労している場合も、その旨を明記することが重要です。

入院歴や通院頻度も重要な要素です。過去の入院回数や期間、現在の通院頻度、服薬状況などは、症状の重篤度を示す指標となります。また、家族の支援がなければ生活が成り立たない場合や、福祉サービスを利用している場合も、その内容を具体的に記載します。これらの情報を総合的に評価することで、より実態に即した障害等級の認定が行われます。

関連記事:統合失調症で働かない方がいい?仕事と治療の両立を考える

統合失調症で障害年金を申請する際の注意点

統合失調症で障害年金を申請する際は、いくつかの重要な注意点があります。申請書類の不備や記載内容の不適切さにより、本来受給できるはずの障害年金が不支給となるケースも少なくありません。特に、診断書の内容と病歴・就労状況等申立書の整合性、日常生活の困難さの適切な表現、症状の変動への対応などに注意が必要です。申請前に十分な準備を行い、必要に応じて専門家のアドバイスを受けることが成功への近道となります。

統合失調症の症状は変動することが多いため、調子の良い時の状態だけでなく、悪い時の状態も含めて総合的に評価してもらうことが重要です。診断書作成時に調子が良い場合でも、普段の悪い状態について医師に詳しく伝え、診断書に反映してもらう必要があります。また、家族や支援者からの情報提供も重要で、本人が自覚していない症状や日常生活の困難さを医師に伝えることで、より正確な診断書の作成が可能となります。

申請のタイミングも重要な要素です。障害認定日(初診日から1年6ヶ月)での請求が原則ですが、その時点で症状が軽かった場合は、症状が悪化してから事後重症請求を行うことも可能です。ただし、事後重症請求の場合は請求日以降の分しか支給されないため、遡及請求ができる障害認定日請求の方が有利な場合もあります。自分の状況に応じて、最適な請求方法を選択することが重要です。

お医者さんと積極的にコミュニケーションを取る

障害年金の申請において、主治医とのコミュニケーションは極めて重要です。診断書は主治医が作成しますが、短い診察時間の中で患者さんの日常生活の困難さをすべて把握することは困難です。そのため、患者さんや家族から積極的に情報提供を行い、実際の生活状況を正確に診断書に反映してもらう必要があります。

診断書作成を依頼する際は、日常生活の具体的な困難さをメモにまとめて医師に渡すことが効果的です。例えば、「朝起きられず、昼過ぎまで寝ている」「買い物に行けず、家族に頼っている」「幻聴により集中できず、仕事でミスが多い」など、具体的なエピソードを記載します。また、症状の変動についても、良い時と悪い時の差を明確に伝えることが重要です。

医師との信頼関係を築くことも大切です。定期的に通院し、処方された薬を適切に服用し、治療に協力的な姿勢を示すことで、医師も診断書作成に協力的になります。診断書の作成には時間と労力がかかるため、早めに依頼し、必要な情報を提供することで、スムーズな作成が可能となります。また、診断書作成料(通常5,000円から10,000円程度)についても事前に確認しておくことが必要です。

お医者さんに作成してもらった診断書のチェック

医師から受け取った診断書は、提出前に必ず内容を確認する必要があります。記載漏れや誤記があると、追加資料の提出を求められたり、最悪の場合は不支給となることもあります。特に、日常生活能力の判定と程度の評価が、実際の状態を適切に反映しているか確認することが重要です。明らかに実態と異なる記載がある場合は、医師に修正を依頼する必要があります。

診断書の「日常生活能力の判定」の各項目が、実際の生活状況と一致しているか確認します。例えば、実際には家族の援助なしには食事の準備ができないのに、「自発的にできる」と記載されている場合は、修正が必要です。また、「日常生活能力の程度」の評価も、総合的な生活能力を適切に表現しているか確認します。

就労状況の記載も重要なチェックポイントです。就労している場合は、職場での配慮内容、就労による症状への影響、欠勤や遅刻の頻度などが適切に記載されているか確認します。また、現症時の日常生活活動能力及び労働能力の欄に、「労働不能」「著しい制限あり」など、実態に即した記載がされているか確認することも重要です。診断書の内容に疑問がある場合は、遠慮せずに医師に確認し、必要に応じて修正を依頼することが、適正な障害認定を受けるために不可欠です。

病歴・就労状況等申立書を正しく記入する

病歴・就労状況等申立書は、発症から現在までの症状の経過、日常生活の状況、就労状況などを本人または家族が記載する重要な書類です。診断書では表現しきれない詳細な情報を記載することで、審査官により正確に状態を理解してもらうことができます。この申立書の内容が診断書と矛盾していると、信憑性が疑われる可能性があるため、整合性を保ちながら、具体的かつ詳細に記載することが重要です。

発症から現在までの経過は、3〜5年程度の期間で区切って記載します。各期間について、症状の内容、通院状況、服薬状況、日常生活の状況、就労状況などを具体的に記載します。特に、症状により困っていることや、家族の援助を受けている内容を詳しく書くことが重要です。「幻聴により夜眠れず、翌日の仕事に支障が出た」「被害妄想により外出できず、買い物は家族に頼んでいる」など、具体的なエピソードを交えて記載します。

就労状況については、職歴を詳細に記載し、各職場での勤務状況、退職理由、職場での配慮内容などを明記します。統合失調症の症状により、転職を繰り返している場合や、長期間就労できていない場合は、その理由を明確に記載します。また、現在就労している場合でも、症状による困難さや、無理をして働いている状況を記載することで、実態を正確に伝えることができます。申立書の作成には時間がかかりますが、丁寧に作成することで、障害年金受給の可能性が高まります。

障害年金の申請手続きの流れ

障害年金の申請手続きは、必要書類の準備から支給決定まで、通常3〜4ヶ月程度かかります。手続きの流れを事前に理解し、計画的に進めることで、スムーズな申請が可能となります。統合失調症の場合、症状により本人が手続きを行うことが困難な場合もあるため、家族や支援者のサポートが重要となります。また、書類の不備により手続きが遅れることもあるため、慎重に準備を進める必要があります。

申請手続きの第一歩は、年金事務所での相談です。初診日の確認、保険料納付要件の確認、必要書類の説明などを受けることができます。この時点で、受給の可能性についてある程度の見通しを立てることができます。相談は予約制の場合が多いため、事前に電話で予約を取ることをお勧めします。

書類の準備には時間がかかるため、余裕を持って進めることが重要です。特に、初診日の証明書や診断書の取得には、医療機関での手続きが必要となり、2週間から1ヶ月程度かかることもあります。また、病歴・就労状況等申立書の作成にも時間がかかるため、早めに着手することが大切です。すべての書類が揃ったら、年金事務所に提出し、審査結果を待つことになります。

相談・書類の準備

障害年金申請の最初のステップは、年金事務所または街角の年金相談センターでの相談です。相談時には、年金手帳、診察券、お薬手帳など、初診日や治療経過が分かる資料を持参します。相談員から、初診日の確認方法、保険料納付要件の確認、必要書類の説明、手続きの流れなどについて詳しい説明を受けることができます。

必要書類の準備は、計画的に進める必要があります。まず、初診の医療機関で「受診状況等証明書」を取得します。初診の医療機関でカルテが残っていない場合は、2番目以降の医療機関で取得し、初診日を証明する参考資料を集めます。次に、現在通院している医療機関で診断書の作成を依頼します。診断書の様式は年金事務所で入手するか、日本年金機構のウェブサイトからダウンロードできます。

病歴・就労状況等申立書は、本人または家族が作成します。下書きを作成し、内容を十分に検討してから清書することをお勧めします。その他、住民票、所得証明書、通帳のコピーなど、個別の状況に応じて追加書類が必要となる場合があります。書類の準備には通常1〜2ヶ月程度かかるため、計画的に進めることが重要です。

申請・審査

すべての書類が揃ったら、年金事務所に提出します。提出時には、書類の内容を再度確認し、記載漏れや添付漏れがないことを確認します。窓口では、書類の形式的なチェックが行われ、不備があれば指摘されます。問題がなければ受理され、受付控えが交付されます。この控えは、審査状況の確認や、不支給の場合の審査請求に必要となるため、大切に保管します。

審査は、日本年金機構の障害年金センターで行われます。提出された診断書、病歴・就労状況等申立書、その他の資料を総合的に評価し、障害等級の認定が行われます。審査期間は通常3〜4ヶ月程度ですが、書類の不備や追加資料の提出を求められた場合は、さらに時間がかかることがあります。審査中は、年金事務所に問い合わせても詳細な進捗状況は分からないため、結果を待つしかありません。

審査の結果、支給決定となった場合は「年金証書」が、不支給となった場合は「不支給決定通知書」が送付されます。支給決定の場合、初回の年金は、認定日または請求日から数えて約1〜2ヶ月後に支給されます。不支給の場合でも、決定に不服がある場合は、3ヶ月以内に審査請求を行うことができます。審査請求により、決定が覆ることもあるため、諦めずに対応することが重要です。

統合失調症で働きながら障害年金を受給することは可能か

「働いていると障害年金はもらえない」という誤解がありますが、統合失調症で就労していても、一定の要件を満たせば障害年金を受給することは可能です。障害年金の認定では、単に就労の有無だけでなく、就労の内容、職場での配慮の有無、就労による症状への影響などを総合的に評価します。障害者雇用での就労、短時間勤務、家族の事業の手伝いなど、様々な就労形態において障害年金の受給が認められています。

重要なのは、就労により日常生活や症状にどのような影響があるかを適切に伝えることです。例えば、「無理をして働いているため、帰宅後は疲労で何もできない」「職場でパニックになることがあり、早退することが多い」「単純作業しかできず、判断を要する仕事は任せてもらえない」など、就労における困難さを具体的に記載することが必要です。

また、職場での配慮内容を詳細に記載することも重要です。「上司が常に見守っている」「ミスをしても叱責されない環境で働いている」「体調に応じて休憩を取れる」など、一般の労働者とは異なる特別な配慮を受けている場合は、その内容を明記します。これらの情報により、形式的には就労していても、実質的には援助や配慮なしには就労が困難であることを示すことができます。

障害者雇用での就労と障害年金

障害者雇用で働いている場合、障害年金を受給できる可能性は比較的高くなります。障害者雇用は、障害があることを前提とした雇用形態であり、職場での様々な配慮を受けながら働いているため、一般就労とは区別して評価されます。障害者雇用での就労は、むしろ障害があることの証明にもなり、障害年金の審査において有利に働くことがあります。

障害者雇用での配慮内容を具体的に記載することが重要です。例えば、「ジョブコーチの支援を受けている」「定期的に産業医や産業保健師と面談している」「障害特性に応じた業務内容の調整を受けている」「通院のための特別休暇が認められている」など、具体的な配慮内容を診断書や申立書に記載します。これらの配慮があって初めて就労が可能であることを示すことで、障害の程度を適切に評価してもらうことができます。

また、障害者雇用であっても、フルタイムで働いている場合と短時間勤務の場合では評価が異なることがあります。週20時間程度の短時間勤務の場合は、それ自体が就労能力の制限を示すものとして評価されます。さらに、就労により症状が悪化している場合や、就労の継続が困難になりつつある場合は、その旨を明記することで、より実態に即した評価を受けることができます。

一般就労での注意点

一般就労(障害をオープンにしない就労)をしている場合でも、統合失調症の症状により日常生活に著しい制限がある場合は、障害年金の対象となる可能性があります。ただし、一般就労の場合は、障害者雇用と比較して障害年金の認定が厳しくなる傾向があるため、より詳細な説明が必要となります。

一般就労でも、実際には多くの困難を抱えながら働いている実態を明確に示すことが重要です。「症状を隠して働いているため、常に緊張している」「幻聴があっても我慢して仕事を続けている」「ミスが多く、上司から注意を受けることが頻繁にある」「人間関係がうまくいかず、孤立している」など、就労における具体的な困難を記載します。また、欠勤、遅刻、早退の頻度や、それらの理由も重要な情報となります。

仕事以外の日常生活への影響も重要な評価ポイントです。「仕事で精一杯で、家では何もできない」「休日は疲労で一日中寝ている」「家事は家族に任せきりになっている」など、就労により日常生活が犠牲になっている状況を具体的に記載します。これらの情報により、形式的には一般就労をしていても、実質的には日常生活に著しい制限があることを示すことができます。

統合失調症での障害年金受給事例

実際の受給事例を知ることで、自分のケースでも障害年金を受給できる可能性があることを理解できます。統合失調症での障害年金受給事例は多岐にわたり、様々な状況の方が受給しています。ここでは、代表的な事例を紹介し、どのような点が評価されて受給に至ったかを解説します。これらの事例を参考に、自分の申請に活かすことができます。

事例から学ぶべきポイントは、症状や生活状況を具体的に伝えることの重要性です。単に「統合失調症で困っている」というだけでなく、日常生活のどの場面で、どのような困難があるのかを詳細に記載することで、審査官に状況を正確に理解してもらうことができます。また、就労している場合でも、適切な説明により障害年金を受給できることも、事例から理解できます。

各事例に共通しているのは、継続的な治療を受けていること、医師との良好な関係を築いていること、申請書類を丁寧に作成していることです。これらの基本的な要素を押さえた上で、個別の事情を適切に説明することが、障害年金受給への道となります。

事例1 初診日の証明が困難だったケース

30代男性、大学在学中に不眠と不安で大学の保健センターを受診したが、カルテが廃棄されており初診日の証明が困難でした。その後、複数の心療内科を転々とし、25歳で統合失調症と診断されました。初診日の証明ができないため、障害年金の申請を諦めかけていましたが、社会保険労務士のアドバイスにより、第三者証明と参考資料を組み合わせて初診日を証明し、障害基礎年金2級が認定されました。

第三者証明として、大学時代の友人2名から、保健センター受診時の様子について証明してもらいました。また、参考資料として、大学の成績証明書(成績が急激に下がった時期)、アルバイト先の勤務記録(欠勤が増えた時期)、当時の日記などを提出しました。これらの資料により、症状の発現時期と医療機関受診の時期が合理的に推定できることを示しました。

このケースのポイントは、初診日の証明が困難でも諦めないことです。カルテが残っていない場合でも、様々な方法で初診日を証明することが可能です。第三者証明は家族以外の2名以上が必要ですが、当時の状況を知る友人、先生、職場の同僚などに依頼することができます。また、間接的な資料でも、複数組み合わせることで信憑性を高めることができます。

事例2 働きながら受給できたケース

40代女性、統合失調症で通院治療を続けながら、障害者雇用で週30時間のパート勤務をしていました。「働いているから障害年金はもらえない」と思い込んでいましたが、主治医の勧めで申請したところ、障害厚生年金3級が認定されました。職場での配慮内容と、就労による日常生活への影響を詳細に記載したことが評価されました。

診断書には、職場での具体的な配慮内容(単純作業のみ、残業免除、月2回の通院配慮、ジョブコーチの定期面談など)を記載してもらいました。また、病歴・就労状況等申立書には、「仕事から帰ると疲労で動けない」「休日は一日中寝ている」「家事は夫が行っている」など、就労により日常生活が制限されている状況を詳細に記載しました。

このケースから学べることは、就労していても障害年金を受給できる可能性があることです。重要なのは、就労における困難さと、それが日常生活に与える影響を具体的に説明することです。また、職場での配慮を受けている場合は、それが障害による制限を示す重要な証拠となります。働いているからといって申請を諦める必要はありません。

事例3 不支給から審査請求で認定されたケース

50代男性、統合失調症で20年以上通院していましたが、初回申請では不支給となりました。不支給の理由は「日常生活能力の程度が軽い」というものでした。しかし、実際の生活状況と診断書の記載に乖離があったため、審査請求を行いました。審査請求では、追加の医師意見書と、詳細な生活状況報告書を提出し、障害基礎年金2級が認定されました。

初回申請時の診断書では、主治医が患者の「できる時の状態」を基準に記載していたため、実際より軽く評価されていました。審査請求では、「症状に波があり、悪い時は全く動けない」「月の半分以上は引きこもっている」「幻聴により夜間不眠が続いている」など、悪い時の状態を詳細に記載した追加資料を提出しました。

このケースの教訓は、不支給でも諦めないことの重要性です。初回の申請で不支給となっても、審査請求により認定される可能性があります。審査請求では、なぜ不支給となったのかを分析し、不足していた情報を補充することが重要です。また、症状に変動がある場合は、悪い時の状態を基準に評価してもらうよう、明確に説明する必要があります。

関連記事:【精神科訪問看護師が解説!】精神疾患を抱える方への重要な看護師のコミュニケーション方法とは?

まとめ|統合失調症での障害年金申請を成功させるために

統合失調症での障害年金申請は、適切な準備と正確な情報提供により、多くの方が受給可能です。重要なのは、3つの受給要件(初診日要件、保険料納付要件、障害状態該当要件)を満たしていることを確認し、症状や日常生活の困難さを具体的に伝えることです。診断書の内容が実態を反映しているか確認し、病歴・就労状況等申立書で補足説明を行うことで、適正な障害認定を受けることができます。

就労している場合でも、障害者雇用や職場での配慮、就労による日常生活への影響などを適切に説明することで、障害年金を受給できる可能性があります。一般就労の場合でも、実際の困難さを具体的に記載することが重要です。働いているからといって申請を諦める必要はありません。

申請手続きは複雑で時間もかかりますが、一つ一つ着実に進めることで、必ず道は開けます。不明な点は年金事務所で相談し、必要に応じて社会保険労務士などの専門家のサポートを受けることも検討してください。障害年金は、統合失調症の患者さんが安心して治療を受け、生活を維持するための重要な支援制度です。諦めずに申請にチャレンジすることで、より良い生活への第一歩となることを願っています。

精神科特化!「訪問看護ステーションくるみ」のお問い合わせはこちら

大阪市、寝屋川市、守口市、
門真市、大東市、枚方市全域対象

“精神科に特化”した
訪問看護ステーション
「くるみ」

06-6105-1756 06-6105-1756

平日・土曜・祝日 9:00〜18:00 
【日曜・お盆・年末年始休み】

※訪問は20時まで
対応させていただいております。

この記事を監修した人

石森寛隆

株式会社 Make Care 代表取締役 CEO

石森 寛隆

Web プロデューサー / Web ディレクター / 起業家

ソフト・オン・デマンドでWeb事業責任者を務めた後、Web制作・アプリ開発会社を起業し10年経営。廃業・自己破産・生活保護を経験し、ザッパラス社長室で事業推進に携わる。その後、中野・濱𦚰とともに精神科訪問看護の事業に参画。2025年7月より株式会社Make CareのCEOとして訪問看護×テクノロジー×マーケティングの挑戦を続けている。

訪問看護師募集中