医療現場において感染対策は、安全な医療・看護を提供するために必要不可欠です。訪問看護の現場でも感染対策が必須ですが、病院とは異なる点も多くあります。
そこで本記事では、訪問看護における感染対策の重要性や実際の対策方法について、精神科訪問看護ならではの視点で解説します。
訪問看護だけでなく、精神科領域に興味のある方もぜひ参考にしてください。
訪問看護における感染対策の重要性
訪問看護における感染対策は、安全な医療・看護を提供するために必要不可欠な行為です。利用者さまはもちろん、自分たちを守るためにも感染対策は欠かせません。
訪問看護では個人宅に上がり、密な関わりが必要とされています。さらに病院のように感染対策の環境が万全ではないため、比較すると感染リスクが高いといえるでしょう。
感染対策に対して正しい知識を持ち、その人に合った対策方法の選択、利用者さまやその家族に理解を得られる関わりなどが求められます。
訪問看護によって考えられる感染経路
正しい感染対策を実施するには、十分な知識が必要です。まずは、感染が成立するための3つの要素について理解しましょう。
1.病原体(感染源)
2.感染経路
3.感受性宿主
感染対策では「2.感染経路の遮断」がもっとも大切です。
ここでは、訪問看護での主な感染経路について解説します。
利用者さまやその家族からの感染
訪問看護では個人宅に上がるため、感染対策の実施レベルは家庭によって差があります。
本人または同居家族が感染予防を意識しているとは限りません。そのため、感染兆候がなくても感染が流行している時期はとくに十分な注意が必要です。
廃棄物からの感染
訪問看護でのケアでは、尿や便、血液などに触れる機会もあります。このような体液が付着したものは在宅医療廃棄物にあたり、一般ごみとしては出せません。
また精神科訪問看護では、自傷行為によって出血している場面に立ち会うことや、噛みつきなどの粗暴行為を受ける可能性もゼロではありません。その場合には、事業所ごとに制定している感染対策ガイドラインにしたがって適切に対処する必要があります。
事故による感染
針刺し事故や、廃棄物が付着するなどのトラブルによる感染も考えられます。
精神科訪問看護ではあまり件数は多くないかもしれませんが、なかには血糖測定・インスリン注射や採血などを実施する機会もあります。状況に応じて、事前に防護服の着用を検討しましょう。
ステーション内での感染
訪問看護では、各利用者さまを訪問したあとステーション内に戻ります。共用する物品は、正しい方法で消毒しましょう。
ステーション内に病原体を持ち込むと、そのなかで感染が広がるため注意が必要です。
訪問看護ですべき4つの感染対策
感染対策には手洗いや手指消毒の徹底のほかにも、マスクや手袋、ガウンなどの感染防護具の着用が有効です。
最後に、訪問看護ならではの感染対策を4つご紹介します。
利用者さまの状態を観察する
訪問時のバイタルサインはもちろん、問診・触診などあらゆる方法で利用者さまやその家族の健康状態を観察します。感染兆候が見られる場合は、厳重に感染対策を行い、必要があればステーションへ対応を確認しましょう。
状況に応じて、医療機関の受診の調整や感染防護具・スタッフの準備が必要になるケースもあります。
処置に使用する物品を清潔に管理する
処置やケアに使用する物品は常に清潔に保ち、操作方法にも注意しましょう。滅菌物以外でも、ネブライザーや経管栄養の器具などを使用している場合は、毎回洗浄・消毒を行います(ただし各ステーションのルールに準ずる)
また、共有物品などステーションに持ち帰るものは、使用後ビニール袋に入れ、万が一病原体が付着していても感染を広げないようにしましょう。
本人・同居家族に適切な感染対策を指導する
訪問看護では、利用者さまやその家族による協力も必要です。普段から感染予防を意識するよう、説明・指導しましょう。感染症が流行する時期には、予防接種を勧めるのも有効です。
日頃の関わりを通して信頼関係を築くことで、お互いが感染対策を意識できるでしょう。
個別性を考えた感染対策を実施する
訪問看護では、利用者さまの状態や自宅環境によっても適切な感染対策が異なります。総合的にアセスメントをしたうえで、最善策を検討しましょう。個別性に配慮した感染対策が大切です。
基本は感染対策マニュアルにしたがって対策し、迷うことがあればステーションに確認しましょう。
訪問看護では個別性を考慮した感染対策が大切
訪問看護で安全に医療・看護を提供するには、適切な感染対策が必要不可欠です。
利用者さまと看護師双方の感染を予防するには、日頃から信頼関係を築き、ともに感染対策の意識を高めることが大切です。利用者さまの個別性を考慮し、その都度必要な対策を検討するのは訪問看護ならではの関わりといえるでしょう。
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