「精神科領域の看護は難しい……」と感じている看護師の方もいるのではないでしょうか。アルコール依存症は、精神科訪問看護において特に重要な看護分野の一つです。各疾患の特徴や看護のポイントを理解することで、患者一人ひとりに合った関わり方を考えられます。
本記事では、アルコール依存症の方への看護のポイント、訪問看護ならではの関わり方ややりがいについてご紹介します。精神科訪問看護に興味のある人は、ぜひ参考にしてください。
アルコール依存症の方への看護の必要性
アルコール依存症とは、アルコールに対しての依存が強く、飲酒に対するコントロールがうまくできない状況を指します。
症状は段階的に進み、お酒が関係する社会的問題や人間関係のトラブルなどを引き起こすことも少なくありません。さらに、アルコールが体内から抜けてくると、手指の震えや動悸などの離脱症状が表れます。
根本的治療は「断酒」であり、本人が治療に積極的に取り組むことはもちろん、周囲の支えが重要となります。長期化しやすいため、適切な治療が継続できる環境作りが大切です。
2018年時点で、アルコール依存症を抱えている外来患者数は9万5,579人、入院患者数は2万5,606人であり、年々増加傾向にあります。そのため、今後も精神科領域における看護の需要も高まるでしょう。
参照:厚生労働省 e-ヘルスネット/アルコール依存症
参照:厚生労働省/第19回アルコール健康障害対策関係者会議 関係府省庁におけるアルコール関連施策の 取組状況
飲酒がやめられなくなる、アルコール依存症の進行過程
アルコール依存症は、以下のような段階を経て進行していきます。
- 依存症の初期: 飲酒が日常生活の一部となり、飲酒量が増加。飲酒時にブラックアウトを経験することもあります。
- 依存症の中期: 精神的な依存が強まり、お酒が生活の中心となる状態。
- 依存症の後期: 身体的依存が顕著になり、離脱症状(振戦、発汗、幻覚など)が現れます。生活に重大な支障をきたし、金銭的や社会的な問題が表面化します。
アルコール依存症の方に対しての看護の5つのポイント
アルコール依存症の方への看護で最も重要なのが、病気について理解していただけるよう介入し、本人を尊重しながら治療を継続できる環境を整えることです。
この章では、アルコール依存症の方に対しての看護のポイントと、訪問看護にて提供できるサポート内容をご紹介します。
病気の正しい知識・理解を促す
アルコール依存症の方は病識が乏しい、もしくは自分が病気であることを認めたがらない(否認)傾向が強いとされています。そのため、適切な治療が開始されるまで時間かかるケースも珍しくありません。
適切な治療を開始するには、本人が病気に対しての知識や理解を持ち、前向きに治療に取り組む姿勢が大切です。病識がないのに無理に断酒を強要しても、うまく治療を進めることはできません。
本人を尊重した関わりのなかで信頼関係を築く
アルコール依存症の方のなかには、悩みや辛さをうまく伝えられず、一人で抱え込んでしまうケースも少なくありません。孤独を感じることで、余計アルコールに依存しやすくなり悪循環を生じます。
本人の個別性を尊重しながら悩みや辛さを共有し、信頼関係を築いていく関わりが大切です。信頼関係がないと、本人が積極的に治療に参加するのが難しくなります。
適切な治療が継続できるよう支援する
アルコール依存症で入院していた方が退院して普段の生活に戻ることで、適切な治療が継続されない可能性があります。
アルコール依存症を克服するには、治療を継続してアルコールに対しての考えをあらためて依存心を取り除くことが必要です。
訪問看護を利用することで自宅でも「断酒」できる環境が整うだけでなく、飲酒に対しての思いや悩みを傾聴して、一緒に問題解決に取り組むなどの精神的ケアを継続できます。結果として、再発や再入院の予防につながります。
飲酒をコントロールし、断酒できる環境を整える
治療を進めるうえで大切なのは、断酒できる環境を整えることです。
しかし、アルコール依存症の方が断酒するのは簡単ではありません。頭ではお酒を飲んではいけないとわかっていても、身体がアルコールを欲してしまう状態(病的飲酒欲求)が見られる場合が多くあります。
そのため、断酒できる環境を整えるのが重要です。患者さまの生活スタイルに合わせた環境作りを意識しましょう。一緒に断酒する方法を考えるとより効果が期待できます。
家族へのフォローも欠かさない
アルコール依存症の治療は、本人だけでなく家族の理解・協力が必要不可欠です。家族に繰り返し病気について説明し、知識・理解を促す働きかけも訪問看護師の役割のひとつです。
また治療は長期化するケースが多く、家族の負担も大きいものとなります。定期的に家族の思いや心身の状況を確認し、精神的サポートを行うことも大切です。
参照:埼玉県立精神医療センター/依存症に対する正しい理解と必要とされる支援について
参照:医療法人せのがわ/アルコール・薬物依存症に対する精神科訪問看護マニュアル第2版
アルコール依存症の方への訪問看護で得られるやりがい
アルコール依存症の方への訪問看護は、精神科訪問看護の領域となります。訪問看護は、病院とは違い一人ひとりのお宅へ訪問して看護を提供するため、一対一でじっくりと向き合えるのが特徴です。
患者さま個人の意思を尊重し、その人に見合った関わりが求められます。さらに、信頼関係が構築されていくと、相談されたり頼られたりすることが増え、自分が必要とされている実感を持てたり、やりがいを感じたりするでしょう。
また、患者さまが自立・社会復帰に向けて進んでいく姿を見れるのは、訪問看護ならではの魅力のひとつです。
訪問看護師ならではの関わりでアルコール依存症の方をサポートしよう
アルコール依存症の方に対する看護で大切なのは、患者本人の病気への理解を深め、治療が継続できる環境を整えることです。
さらに訪問看護では、より患者さま一人ひとりに向き合い、個別性ある看護が求められます。患者さまが自立に向けて進んで行く姿をみると、大きなやりがいを感じることでしょう。
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