ジスキネジアとは、抗精神薬の長期投与やパーキンソン病治療薬などを使用した場合に生じるとされる、全身の不随意運動を指します。看護師はジスキネジアの症状や日常生活への影響などを観察し、患者さまの生活をサポートする必要があります。
この記事では、ジスキネジアの患者に対する看護の必要性や、看護計画の立案に必要な観察項目についてまとめました。看護の注意点やポイントをわかりやすく解説しておりますので、ぜひ参考にしてください。
看護が必要となるジスキネジアの症状
ジスキネジアは「自分では止められない、または止めてもすぐに出現する動き」の総称であり、人によってさまざまな症状が出現します。
ジスキネジアの症状は主に、顔面・口腔に出現する症状と体幹・四肢に出現し、以下のような症状が見られます。
顔面・口腔に出現する症状 | 体幹・四肢に出現する症状 |
・口をもごもごさせる
・口を突き出す ・歯を食いしばる ・目を閉じるとなかなか開かない ・眉間にしわを寄せる |
・手に力が入って抜けない
・勝手に手足が動いてしまう ・足が勝手に動いて歩けない ・椅子から立ったり座ったりを繰り返す |
出典:厚生労働省/重篤副作用疾患別対応マニュアル ジスキネジア
これらの症状は一例であり、全ての患者さまに当てはまるわけではありません。ジスキネジアの患者さまのADLを評価するためにも、上記の症状を覚えておきましょう。
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ジスキネジアの治療における看護の必要性
ジスキネジアの治療を適切に進めるには、看護師による観察や評価、アセスメントが必要です。
ジスキネジアは原因となる薬を調節しながら、症状を抑えることがメインの治療となります。症状の評価や日常生活への影響、服薬のタイミングと症状の関係性などを評価し、医師や薬剤師へ情報を共有することが看護師の重要な役割の1つです。
また、患者さんの服薬管理やADLへの介入を行い、安全に生活するためにサポートすることも大切です。
ジスキネジアの患者さまにおける看護のポイント
ジスキネジアの患者さまを看護する際は「薬の管理」がポイントとなります。症状の原因となる薬の種類や用量、症状の関係性などを把握して医師と共有し、患者さまごとに薬を調整することが大切です。
また、不安障害やパーキンソン病など、ジスキネジアの原因疾患に対する看護もおろそかにしてはいけません。中には、ジスキネジアの原因となる薬を減量もしくは中止したことで、精神症状が悪化する恐れもあります。患者さまの全身状態を観察し、症状の変化の有無を確認しましょう。
ジスキネジアの看護をするうえで知っておきたい注意点
ジスキネジアの多くは重症化しにくいとされていますが、中には食事摂取が困難となる方や誤嚥を起こしやすくなる方、寝たきりになってしまう方もいます。
誤嚥が出現したケースでは誤嚥性肺炎のリスクが高まるため、日々の状態観察を欠かさず行い、重症化を早めに察知しましょう。在宅で看護・介護している場合には、家族にも日々の状態の観察・記録を協力してもらうことも必要です。
ジスキネジアに対する看護計画
ジスキネジアの方へ適切な看護計画を立案するには、重要となる観察項目の立案や目標設定が必要となります。
ここでは、必要な観察項目や看護計画を立案する際に役立つ患者目標の例について見ていきましょう。
看護計画立案に必要な観察項目
ジスキネジアの患者さまへ適切な看護計画を立案するには、以下のような観察項目へ注目する必要があります。
・服用している薬の確認
・原疾患による症状や治療状況
・症状の強さやパターンの確認
・日常生活に及ぼしている影響
・ADL自立度
症状や服用している薬の確認のほかにも、ジスキネジアの症状の強さやパターン、障害されているADLなどを評価することで、安全に生活するための看護計画が立案可能となります。
患者さまが何に不自由を感じているのかを確認し、どのような問題が生じているのかを考えましょう。
看護計画立案に使える「看護目標」
ジスキネジアの患者さまへ適切な看護計画を提供するためには、患者さまに合った目標を立てましょう。
ジスキネジアの方に立案する看護計画と、その目標の例を紹介します。
・服薬管理:服薬を自己管理できるようになる
・日々の状態観察:症状の出現しやすい時間を把握できる
・ADL指導:症状とうまく付き合いながらADL自立度を高められる
・環境整備:安全に生活できるよう環境を整えられる
ジスキネジアの方へ看護を実施する場合は、患者さまの生活を考慮したうえで看護計画を立案することが大切です。
ジスキネジアについて学びたい方は訪問看護もおすすめ
ジスキネジアは、患者さまの生活やADLに大きく影響する場合があります。症状やADLの観察、看護計画立案を正しく実施し、適切な看護を提供しましょう。
また、ジスキネジアは自宅で治療を続けている方もいます。在宅医療に興味がある方は、精神科訪問看護師として働くのも選択肢の1つです。『訪問看護ステーションくるみ』では、精神疾患を抱える利用者さまと、じっくり向き合いながら看護ができます。
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