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間欠性爆発性障害の夫への対処法|妻が自分と子どもを守るためにできること

精神科訪問看護とは

「夫が、ほんの些細なことで突然激昂し、手がつけられなくなる」 「普段は優しいこともあるのに、スイッチが入ると別人のように暴言を吐く」

日々の生活の中で、夫の予測できない怒りの爆発に怯え、息を潜めるように過ごしてはいませんか。「私の言い方が悪かったのかな」「もっと私が気をつければ怒らせずに済むはず」と、ご自身を責めてしまうこともあるかもしれません。しかし、その激しい怒りは、夫の性格の問題だけではなく「間欠性爆発性障害(IED)」という脳の機能や心の病気が関係している可能性があります。

夫の怒りに晒され続けることは、あなたの心身に深刻なダメージを与えます。まずあなたに知っておいていただきたいのは、この状況は決して「あなたに責任があるわけではない」ということです。一人で抱え込み、耐え続ける必要は全くありません。

この記事では、間欠性爆発性障害という疾患の特性を正しく理解し、夫の爆発から自分と子どもを守るための具体的な方法、そして専門家への相談の進め方について詳しく解説します。

※本記事は、間欠性爆発性障害についての理解を深めるための一般的な情報を提供するものであり、医学的な診断を行うものではありません。正確な診断は精神科や心療内科の専門医のみが行えますので、必要に応じて医療機関をご受診ください。

ご不安な気持ちが強い時や、文章を読むのがお辛い時は、無理をせず私たちにお声がけください。

精神科の専門スタッフが、あなたの状況に合わせてお話をお伺いします。まずはお気軽にご相談ください。

大阪市、寝屋川市、守口市、
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“精神科に特化”した
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「くるみ」

06-6105-1756 06-6105-1756

平日・土曜・祝日 9:00〜18:00 
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対応させていただいております。

夫の怒りは「性格」ではなく「病気」かもしれない

毎日一緒に暮らすパートナーの怒りが異常だと感じたとき、それが単なる「短気な性格」なのか、それとも「病気」としての症状なのかを判断することは非常に困難です。まずは、間欠性爆発性障害という状態がどのようなものかを知ることから始めてみましょう。

間欠性爆発性障害とはどんな状態か

間欠性爆発性障害(IED:Intermittent Explosive Disorder)とは、突発的で激しい怒りの爆発を繰り返すことを特徴とする精神疾患の一種です。精神疾患の診断基準である「DSM-5」にも定義されており、怒りの衝動を本人の意思でコントロールすることが極めて難しい状態を指します。

この障害がある場合、怒りの原因となる出来事に対して、表出される怒りの強さや攻撃行動が明らかに不釣り合いであることが特徴です。例えば、料理の味付けが少し違う、返事が一瞬遅れたといった、他人から見れば取るに足りないきっかけで、激しい怒鳴り声や物への破壊行動、時には暴力が引き起こされることがあります。本人は後で説明する際にも「なぜあんなに怒ったのか自分でも正確に説明できない」と感じていることも少なくありません。

「普通の怒りっぽさ」との違い

誰でも、仕事が忙しかったり体調が悪かったりすれば、ついイライラして声を荒らげてしまうことはあるものです。しかし、間欠性爆発性障害と一般的な「怒りっぽさ」には決定的な違いが存在します。

それは、「後悔の念」と「コントロールの欠如」です。普通の怒りであれば、怒った後でも「あそこまで言う必要はなかったな」と客観的に振り返り、次からは気をつけようと制御することが可能です。一方で、間欠性爆発性障害の場合は、爆発の瞬間は完全に理性が失われたような状態になり、本人の意思とは無関係に衝動が突き抜けてしまいます。そして最大の特徴は、怒りが爆発した後、激しい自己嫌悪や落ち込みに苦しむことも少なくないという点です。決して「怒りたくて怒っている」わけではなく、本人も自分の衝動に振り回されているという側面があるのです。

家族にだけ爆発しやすい理由

「外では穏やかで評価も高いのに、家の中(家族)にだけキレる」というケースは非常に多く見受けられます。これを聞くと、周囲からは「内弁慶なだけ」「甘えている」と思われがちですが、疾患の特性から見ると別の理由が浮かび上がってきます。

職場や公の場では、本人は多大なエネルギーを使って衝動を抑制しようと努めています。しかし、家庭という「本来リラックスすべき場所」や、自分を受け入れてくれるはずの「家族の前」では、その抑制の糸がプツリと切れてしまいやすいのです。安心できる環境だからこそ、溜まっていた脳の興奮や衝動が、身近な存在である妻や子どもに向かって一気に放出されてしまいます。これは決してあなたが軽んじられているわけではなく、夫側の脳の機能や心理的な余裕が、家庭内で限界を迎えてしまうために起こる現象と考えられています。

関連記事:間欠性爆発性障害とは?症状・原因・治療法を徹底解説

夫が間欠性爆発性障害の場合に起こりやすいこと

この障害を抱える夫と生活し続けることは、家族の生活を根底から揺るがします。特に子どもや妻への影響は、後から取り返しのつかない傷跡を残すこともあるため、客観的な視点で現状を把握しておくことが重要です。

子どもへの影響

子どもの前で大声で怒鳴ったり、暴れたりすることは「面前DV」と呼ばれる心理的虐待にあたります。たとえ子どもに直接手が出ていなくても、その影響は甚大です。

子どもは常に「いつお父さんが怒り出すか」と、家庭内で過度な緊張状態に置かれます。その結果、他人の顔色を伺いすぎる、自分の感情を押し殺す、あるいは逆に攻撃的な行動をとるようになるなど、情緒が不安定になるリスクが高まります。「自分がいい子にしていなかったからお父さんが怒ったんだ」と誤った責任を感じてしまうことも多く、自己肯定感の著しい低下を招くこともあります。子どもが健やかに育つためには、何よりも家庭が「安全な場所」であることが不可欠なのです。

妻が「自分が悪い」と思い込んでしまうメカニズム

間欠性爆発性障害の夫を持つ妻の多くが、「私がもっとうまく立ち回れば怒らせずに済むはずだ」という思考に陥ります。これには、この障害特有のサイクルが関係しています。

夫は爆発した後に、涙を流して謝罪したり、これまでにないほど優しくなったりすることがあります。この爆発後の穏やかな時期は「ハネムーン期」と呼ばれ、この時期があるために、妻側は「本当は優しい人なんだ」「私の伝え方が悪かったせいであんなことになったんだ」と、相手の病理を自分の責任として引き受けてしまいやすくなります。しかし、この爆発と謝罪の繰り返しは、疾患の典型的なパターンであり、あなたの対応が原因で起こっているわけではないことを、ぜひお心に留めておいてください。

長期化すると妻自身も心身に不調をきたすリスク

夫の顔色を伺い、常に地雷を踏まないように神経をすり減らして生活することは、精神的な拷問を受けているのと変わりません。このような生活が数ヶ月、数年と続くと、妻自身の心身が「壊れていく」危険性があります。

慢性的な不眠や動悸、食欲不振、さらには「何も感じなくなる」という“解離”のような症状が現れる場合も見受けられます。自己肯定感が削り取られ、「自分には価値がない」「どこへも逃げられない」と思い詰めてしまう前に、今の状況は異常であり、あなたは被害者であることを認識していただきたいのです。あなた自身の命と健康を守ることは、結果として子どもを守ることにも繋がります。

関連記事:家族にだけキレる・イライラするのは病気?原因と対処法を徹底解説

妻が自分と子どもを守るための対処法

夫が爆発している最中、あるいは平穏な時間に、妻としてどのような行動をとるべきでしょうか。特に意識したい点として、夫を「変える」ことではなく、自分たちの「安全」を確保することを最優先に考えてみてください。

爆発が始まったときの安全な対応

夫の爆発が始まってしまったら、まず優先すべきは「物理的な安全」です。嵐が過ぎ去るのを待つように、その場をやり過ごすことに専念しましょう。

もし怒鳴り始めたり、不穏な空気を感じたりしたら、決してその場で議論を続けようとしないでください。夫の脳は今、興奮状態で話が通じる状態ではありません。可能であれば、子どもを連れて別の部屋に移動し、鍵をかけるか、そのまま外へ散歩に出るなどして距離を置いてみてください。物理的に離れることは逃げではなく、被害を最小限にするための最も賢明な「防御」です。夫が落ち着くまで、別の空間で自分たちの呼吸を整える時間を持ちましょう。

やってはいけない対応

夫の怒りを鎮めようとして、ついやってしまいがちですが、かえって事態を悪化させる対応があります。

まず、感情的に言い返すことは極力避けてください。「あなたはいつもそう!」「間違っているのはそっちでしょ!」と正論をぶつけると、夫の爆発に燃料を注ぐことになり、怒りがエスカレートして暴力に発展するリスクが高まります。また、「なぜそんなことで怒るの?」と原因を問い詰めることも逆効果です。本人も理由が分からず苛立っていることが多いため、問い詰められるとさらに混乱し、攻撃性が増してしまいます。さらに、過度に謝り続けることも控えたほうがよいでしょう。理不尽な状況で謝り続けることは、「怒れば妻が屈服する」という誤った学習を相手にさせてしまい、支配的な関係を強化するサイクルを作ってしまいます。

記録をつけておくことの重要性

日常的な出来事を、日記やメモアプリに記録しておくこともぜひ心がけてみてください。いつ、どのような状況で、どのような暴言や行動があったのかを、できるだけ客観的に記しておきましょう。

この記録は、主に二つの役割を果たします。一つは、夫に受診を促す際の「客観的な事実」としての提示です。本人は爆発中の記憶が曖昧なことも多いため、具体的な記録があることで、自分の状態が異常であることを自覚しやすくなります。もう一つは、万が一状況が悪化し、法的措置や行政の介入が必要になった際、あるいは離婚を検討する際の「証拠」となります。録音や写真(壊された物など)も併せて保存しておくと、いざという時にあなたを守る盾になってくれるでしょう。

夫に受診を促すための方法

間欠性爆発性障害は、適切な治療によって改善が見込める疾患ですが、本人に受診を決意させることは容易ではありません。相手のプライドに配慮しつつ、一歩踏み出すための提案方法を考えてみましょう。

「病気だ」と直接言わない

夫を心配するあまり、「あなたは病気だから病院に行って」と言いたくなる気持ちは分かりますが、この言い方は慎重に避けるべきです。多くの場合、夫は「自分がおかしいと言われた」と受け取り、強い侮辱を感じて激しく反発します。

提案する際は、「あなたの性格を直してほしい」というスタンスではなく、「あなたの心身の状態を心配している」という寄り添いの形をとるのが効果的です。「最近、夜ぐっすり眠れていないみたいで心配」「いつも何かに追われているようで辛そうに見えるから、一度専門の方に相談して、体が楽になる方法を一緒に探しに行かない?」といった伝え方をご一考いただければ幸いです。受診の主目的を「怒りを治す」ことから「本人の辛さを取り除く」ことにすり替えることで、抵抗感を和らげることができます。

受診を拒否された場合の選択肢

もし夫がどうしても受診を拒むのであれば、無理に連れて行く必要はありません。まずは、ご自身の悩みとして専門家に相談してみることも大切です。

多くの医療機関や精神保健福祉センターでは、家族からの相談を受け付けています。専門家に現状を話すことで、「夫にどう接すれば受診に繋げられるか」という具体的なアドバイスをもらうことができます。あなたが専門家と繋がっているという事実自体が、家庭内での孤立を防ぎ、あなたの精神的な支えとなります。夫を変えるための外堀を埋める作業だと思って、まずはあなた自身のための相談としてスタートさせてみてください。

訪問看護という選択肢

病院へ行くこと自体に高いハードルを感じている場合や、外に出る気力さえない状態であれば、自宅に専門スタッフが訪問する「精神科訪問看護」を利用するのも一つの方法です。

訪問看護では、看護師や精神保健福祉士がご自宅に伺い、リラックスした環境で本人の話を聞いたり、生活の困りごとを一緒に解決したりします。通院が難しい段階でも、第三者が定期的に介入することで、本人の自覚を促したり、家庭内の緊張を緩和させたりする効果が期待できます。私たち「くるみ」でも、家族全体の安全と健康を考えたサポートを行っていますので、外への一歩が重いときはぜひご検討ください。

 

 

妻自身のケアと相談先

夫を支えようと努力しているあなたは、既に十分すぎるほど頑張っています。しかし、今のあなたは「限界」の瀬戸際に立っているかもしれません。どうぞご無理なさらず、自分を労わることは生きていくために必要な「義務」だと考えてみてください。

夫の問題を家庭内だけで解決しようとしないでください。あなたがどれだけ努力しても、脳の機能に起因する衝動を一人で制御することは不可能です。身近な人に話すだけでも状況は変わりますし、信頼できる友人や親族、あるいはカウンセラーなどの専門家に今の状況を正直に話すことで、暗闇の中に光が差すこともあります。

もし、夫の言動に恐怖を感じたり、物を壊されたり、身体的な暴力を受けたりしているなら、それは紛れもなくDV(ドメスティック・バイオレンス)です。「病気だから仕方ない」と「暴力を許す」ことは全く別の問題です。身の危険を感じたときは、迷わずDV相談ナビ「#8008(はれれば)」や、お近くの配偶者暴力相談支援センターに頼ってください。法的なサポートや行政への相談も選択肢です。彼らはあなたの安全を確保するための具体的なプランを一緒に考えてくれます。

また、妻であるあなた自身が精神科や心療内科を受診し、カウンセリングを受けることも検討してみてください。夫の爆発によって傷ついた自尊心を回復させ、自分の人生の主導権を取り戻すプロセスは、一人では困難です。私たち「くるみ」のような精神科訪問看護サービスも、ご家族の心のケアを大切に考えています。専門スタッフがあなたの声に耳を傾け、家庭という閉鎖的な空間に風を通すお手伝いをします。あなたが「助けて」と声を上げることは、あなたとお子さまを守るために大切な行動なのです。

参照:DSM-5(精神疾患の診断・統計マニュアル第5版)

まとめ

夫の突然の怒鳴り声や暴言に怯え、常に「次はいつ怒り出すだろう」と震えながら生活することは、想像を絶する苦痛です。そのような環境で、心身ともに健やかでいられる人はいません。あなたが今、心身ともに限界だと感じているのは、あなたの心が正常に機能している証拠です。

間欠性爆発性障害という疾患は、本人にとっても家族にとっても過酷なものです。しかし、適切な医学的治療や心理的アプローチ、それ以上に「家族が安全を確保し、一人で抱え込まない体制」を作ることで、状況が好転していく可能性は十分にあります。

どうか、ご自身を責める必要は全くありません。まずはあなたと子どもの安全を最優先にし、相談窓口などをぜひご活用ください。私たちは、あなたが再び自分らしい笑顔を取り戻し、安心して眠れる夜を迎えられるよう、全力でサポートします。精神科訪問看護ステーション「くるみ」は、いつでもあなたの味方として、その歩みに寄り添い続けます。

ひとりで抱え込まないでください。私たちがそっと寄り添います。

ご家族やご本人だけで抱え続けることの苦しさを、私たちは知っています。

「少し話を聞いてほしい」だけでも大丈夫です。まずはお気軽にご相談ください。

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この記事を監修した人

中野誠子

株式会社Make Care 代表取締役社長

中野 誠子

看護師 / (元)重症心身障害児者認定看護師

精神科病棟勤務・看護学校教員として経験を積み、「こころに寄り添う看護」を志す。石森・濱𦚰とともに株式会社Make Careを創業。現在は訪問看護ステーションくるみの代表として現場に立ちつつ、メディアにも積極的に登場し、地域精神医療の啓蒙とアップデートに挑む。

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