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「資格」ではなく、「組織へ還元できる人」に投資したい。認定・専門看護師は利益を生むのか? 訪問看護経営のリアル【CEOコラム】Vol.081

HEROさんシリーズくるみの社長エッセイ

こんにちは。株式会社Make Careの代表取締役CEOであり、訪問看護ステーションくるみでマーケティングを担当している石森寛隆です。XではHEROと名乗っていますので、もしよろしければフォローください。


「オーバースキルはお金“は”生まない」。それでも、認定看護師・専門看護師に手当をつける理由

訪問看護の世界では、ときどきこんな空気を感じます。

「認定看護師がいます」
「専門看護師がいます」
「公認心理師がいます」

もちろん、それ自体は素晴らしいことです。
看護師が専門性を磨き、時間もお金も使いながら学び続けることは、簡単なことではありません。

そして、これは僕たち自身も同じです。

訪問看護ステーションくるみでは、専門看護師がいること、公認心理師がいることを、対外的な強みとして伝えています。
また、訪問看護ステーションラララにおいても、認定看護師がいることは広報上の強みとして活用しています。

さらに、僕たちは社内奨学金制度も整備し、認定看護師・専門看護師などの資格取得を支援しています。
(詳しくはコチラのコラムもご確認ください💁訪問看護の独立・キャリアに「詰んだ」と感じるあなたへ。Make Careが提示する、囲い込まない組織の正体 )

学びたい人が、経済的な理由だけで挑戦を諦めてしまうのは、組織としても社会としても損失だと思っているからです。

つまり、僕は「資格を打ち出すこと」そのものを否定しているわけではありません。

専門性をわかりやすく伝えるうえで、資格は大切な入口になります。
利用者さん、ご家族、相談支援専門員、医療機関、関係機関に対して、安心材料になる場面もあります。

採用においても同じです。
「学べる環境がある」「専門性を大切にしている組織である」というメッセージにもなります。

ただし、入口で終わってはいけない。

資格を掲げるなら、その先に実践が必要です。
教育、記録、後進育成、組織づくりまでつながって初めて、その専門性は本当の意味で価値になります。

ただ、僕は経営者として、そこを少し冷静にも見ています。

なぜなら、訪問看護の報酬制度は、病院ほど“資格”に対して直接的な評価をしてくれる構造ではないからです。

極端な話をすれば、認定看護師が訪問に行ったからといって、利用者さん1人あたりの売上が劇的に上がるわけではありません。

専門看護師が在籍しているからといって、それだけで毎月の報酬が大きく増えるわけでもありません。

訪問看護の経営に直結するのは、むしろかなり泥臭い部分です。

  • 訪問件数
  • キャンセル率
  • 振替率
  • 移動効率
  • スタッフ定着率
  • 地域連携
  • オンコール体制
  • 記録精度
  • 請求漏れの防止

こういった日々の運営力の方が、短期的な売上には直結します。

どれだけ高い専門性があっても、訪問件数が組めなければ売上にはなりません。
どれだけ立派な知識があっても、キャンセルが多ければ収益は落ちます。
どれだけ優秀な人材がいても、組織として再現性がなければ事業は安定しません。

つまり、厳しい言い方をすれば、
“オーバースキル”は、お金“は”生まない。

これは、訪問看護経営において、ある意味で事実です。


訪問看護で求められる専門性は、「個人技」ではない

ただ、一方で僕は、認定看護師や専門看護師の価値を否定したいわけではありません。

むしろ逆です。

僕は、訪問看護における認定・専門の価値は、「難しい利用者さんを診られること」だけではないと思っています。

もちろん、高度な知識や臨床判断は必要です。
複雑なケースを読み解く力も、現場では大きな支えになります。

ただ、それだけでは足りません。

本当に重要なのは、

その知識や技術を、組織全体へ還元できるかどうか。

ここです。

病院のように、専門家が集中的に高度医療を提供する構造と違い、訪問看護は“チーム戦”です。

一人のスーパープレイヤーがいるだけでは、現場は回りません。
むしろ、日々の訪問は複数のスタッフによって支えられています。

だからこそ、専門性は個人の中で完結してはいけない。

現場では、

  • 新人教育
  • 記録の質
  • 倫理観の共有
  • カンファレンス設計
  • 医師との連携
  • 相談支援専門員との連携
  • リスク管理
  • 属人化の排除
  • 判断基準の統一

こういった「組織全体の看護力」が極めて重要になります。

専門性とは、“自分だけが出来ること”ではなく、

「チーム全体の基準を引き上げる力」

だと僕は考えています。

高度な知識を、現場で使える言葉に変える。
複雑な判断を、スタッフが迷わない基準に変える。
個人の経験を、組織の財産に変える。

そこまで出来て初めて、訪問看護における専門性は、本当の意味で価値になるのだと思います。


資格ホルダーだけなら、正直いらない

かなり厳しい言い方になりますが、僕は、「資格を持っているだけ」の認定看護師や専門看護師には、そこまで価値を感じません。

もちろん、資格を取る努力は尊重します。
そこに至るまでの学びや経験を軽く見ているわけではありません。

ただ、訪問看護という現場では、資格そのものよりも、資格をどう使うかの方がはるかに大切です。

知識や技術を、自分の中だけで完結させるのであれば、訪問看護では価値化しづらい。

訪問看護は、単独訪問でありながら、組織戦でもあります。

一人で訪問するからこそ、組織としての判断基準が必要になります。
現場で迷う場面があるからこそ、相談できる文化が必要になります。
利用者さんの生活に深く入る仕事だからこそ、倫理観や記録の質が問われます。

だから必要なのは、

  • 教育へ落とし込む
  • 判断基準を言語化する
  • 後進を育てる
  • 記録文化を整える
  • 再現性を作る
  • チームへ還元する
  • 難しいケースを一人で抱え込ませない
  • 現場の不安を構造化する

ところまで出来る専門職です。

“専門性を独占する人”ではなく、
“専門性を組織に広げられる人”。

“自分は分かっている”で止まる人ではなく、
“みんなが分かる形にする”人。

そこに、訪問看護における認定・専門の本当の価値があると思っています。


くるみの専門看護師が担っている役割

ウチの専門看護師も、単に臨床に出ているだけではありません。

臨床の中で研究を進めながら、QCC(Quality Control Committee)の中心メンバーとして、

  • 教育
  • 記録整備
  • 後進育成
  • 看護品質管理
  • 倫理観の共有
  • 事故予防
  • 現場判断の標準化
  • 支援の振り返り

などに深く関わってくれています。

QCCは、単なる委員会ではありません。

現場の看護の質をどう守るのか。
記録をどう整えるのか。
新人や若手をどう育てるのか。
事故やトラブルをどう未然に防ぐのか。
支援の質を属人化させず、どう組織として積み上げるのか。

そういった問いに向き合う、組織の品質管理の中核です。

そこに専門看護師が関わってくれていることには、大きな意味があります。

これは、短期的な売上には直結しません。

ですが、長期的に見ると、

  • 事故率
  • 離職率
  • 判断ミス
  • 属人的対応
  • 記録トラブル
  • 教育のばらつき
  • 現場の孤立

こういった“組織の崩れ”を防ぐ、極めて重要な土台になります。

訪問看護は、人が辞めると崩れます。
記録が乱れると崩れます。
判断が属人化すると崩れます。
教育が場当たり的になると崩れます。

だからこそ、専門性を持つ人が、組織の仕組みづくりに関わる意味は大きい。

僕は、ここに大きな価値があると思っています。


だから、手当をつける

訪問看護の報酬制度だけを見るなら、認定看護師や専門看護師への投資対効果は、決して派手ではありません。

むしろ、経営だけを短期の数字で考えれば、訪問件数を増やした方が利益は出るかもしれない。

資格手当を出すよりも、営業に投資した方が、すぐに売上へつながる場面もあると思います。

それでも、ウチは手当をつけます。

なぜか。

それは、資格への“ご褒美”ではありません。

僕たちが評価したいのは、資格そのものではなく、その資格を通じて組織に何を還元しているかです。

  • 学び続ける姿勢
  • 知識を還元する姿勢
  • 後進を育てる姿勢
  • 組織文化を整える姿勢
  • 現場の判断を支える姿勢
  • 看護の質を守ろうとする姿勢

そこに対する投資だからです。

訪問看護は、制度だけでは守れません。

報酬制度は大切です。
加算も大切です。
訪問件数も、売上も、利益も大切です。

でも、それだけで良い組織は作れません。

最後に組織を支えるのは、「文化」と「再現性」だと僕は思っています。

良い判断が、個人の勘で終わらないこと。
良い支援が、たまたまの成功で終わらないこと。
良い記録が、一部の人だけの努力で終わらないこと。

そういう積み重ねが、訪問看護ステーションの本当の力になります。

そして、その中心にいるのが、本当の意味での認定看護師・専門看護師なのだと、僕は考えています。

オーバースキルは、お金“は”生まない。

でも、組織の未来は作る。

だから僕たちは、認定看護師・専門看護師に手当をつけます。
それは、資格に払っているのではありません。

組織の看護力を上げる人に、投資しているのです。

この記事を書いた人

石森寛隆

株式会社 Make Care 代表取締役 CEO

石森 寛隆

Web プロデューサー / Web ディレクター / 起業家

ソフト・オン・デマンドでWeb事業責任者を務めた後、Web制作・アプリ開発会社を起業し10年経営。廃業・自己破産・生活保護を経験し、ザッパラス社長室で事業推進に携わる。その後、中野・濱𦚰とともに精神科訪問看護の事業に参画。2025年7月より株式会社Make CareのCEOとして訪問看護×テクノロジー×マーケティングの挑戦を続けている。

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