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ADHDの人と会話が噛み合わないとき|すれ違いが起きる場面と、周りができる工夫

精神科訪問看護とは

職場の同僚や部下、上司、あるいは家族やパートナーと話しているとき、「なんだか話が噛み合わない」「こちらの意図が伝わっていない気がする」と感じることはないでしょうか。何度同じように説明しても、うまくコミュニケーションが取れずにすれ違ってしまう場合、その背景にはADHD(注意欠如・多動症)などの発達障害の特性が関係している可能性があります。

ADHDの特性がある方との間で会話が噛み合わなくなるメカニズムと、お互いがスムーズにやり取りをするために周りの人ができる具体的な工夫についてお伝えします。

ご不安な気持ちが強い時や、文章を読むのがお辛い時は、無理をせず私たちにお声がけください。

精神科の専門スタッフが、あなたの状況に合わせてお話をお伺いします。まずはお気軽にご相談ください。

 

大阪市、寝屋川市、守口市、
門真市、大東市、枚方市、吹田市、尼崎市全域対象

“精神科に特化”した
訪問看護ステーション
「くるみ」

06-6105-1756 06-6105-1756

平日・土曜・祝日 9:00〜18:00 
【日曜・お盆・年末年始休み】

※訪問は20時まで
対応させていただいております。

 

「話が噛み合わない」と感じるのは、こんな場面

日々のやり取りの中で、具体的にどのようなコミュニケーションのすれ違いが起きやすいのか、よくある場面をいくつか紹介します。

 

話しているうちに、話題が別のところへ移っている

一つのテーマについて話していたはずなのに、少し時間が経つと全く別の話題に切り替わっていることがあります。相手の頭の中に新しいアイデアや関心事が浮かぶと、元の話の流れを置いて、そちらへ興味が移ってしまう傾向があることが関係しています。結果として、最初に話していた内容の結論が出ないまま会話が終わってしまうことが起こりやすくなります。

 

質問したことと、少しずれた答えが返ってくる

「Aの件はどうなっていますか?」と質問したのに対して、「Bの件は終わりました」と返ってきたり、質問の意図とは少し異なる独自の視点から回答されたりすることがあります。相手の話の一部に反応して自分なりの解釈を広げてしまい、全体としての文脈がずれてしまうことが関係していると考えられます。

 

こちらの話が最後まで届いていないように感じる

真剣に説明している最中でも、相手の視線が別のところに向いていたり、別の作業を始めたりして、「本当に話を聞いているのだろうか」と不安になることがあります。これは相手を無視しているとは限らず、周囲の物音や別の刺激に注意が引かれてしまい、目の前の会話に集中し続けるのが難しいという特性が影響していることがあります。

 

一度に複数のことを伝えると、一部だけが残る

「まずは書類を印刷して、次に〇〇さんに連絡し、最後にこのデータを入力してください」と複数の指示を出したとき、最初の一つや最後の一つしか伝わっていないことがあります。これは頭の中に一時的に情報を留めておく「ワーキングメモリー」の働きが関係しており、情報が多くなると整理しきれずに抜け落ちてしまうという背景が考えられます。

 

会話例で見る、すれ違いが起きる瞬間

実際の生活の中でどのようにすれ違いが起きるのか、職場と家庭の一般的な会話例を紹介します。

 

職場での一場面

上司:「今日の会議の準備をお願い。資料を10部コピーして、プロジェクターの接続確認をしてから、会議室の空調を入れておいてね。」 部下:「わかりました!」

(10分後) 部下:「プロジェクターの接続できました!あ、そういえば先週の企画書の件ですが……」 上司:「ありがとう。ところで資料のコピーと空調はどうなってる?」 部下:「あっ、忘れていました……」

一度に複数の指示を受けたことで情報が抜け落ち、さらに途中で思い出した「企画書」という別の話題に意識が飛んでしまったことで、本来の目的からずれてしまっている状態です。

 

家庭での一場面

Aさん:「今日の帰りに、牛乳と卵と、トイレットペーパーを買ってきてくれる?」 Bさん:「わかった、買ってくるよ。」

(帰宅後) Bさん:「買ってきたよ!スーパーで新商品の美味しそうなアイスがあったから、それも買っちゃった。」 Aさん:「ありがとう。あれ、トイレットペーパーは?」 Bさん:「あ、アイスを見たらすっかり忘れちゃった。」

この場面でも、視覚的な強い刺激(アイス)が入ったことで、それまで覚えていた「トイレットペーパーを買う」という情報が押し出されてしまったことがうかがえます。

 

すれ違いの背景にあるもの

こうした会話のすれ違いや「話の飛びやすさ」の背景には、ADHDの特性である「不注意(注意が散漫になりやすい)」「多動性(じっとしていられない)」「衝動性(思いついたことをすぐに行動や言葉にする)」が関係していることがあります。

脳内の注意をコントロールする機能や、情報を一時的に保持して整理するワーキングメモリーの働きに偏りがあるため、悪気はなくても相手の話に集中し続けることが難しかったり、思い浮かんだことをそのまま発言して一方的に話してしまうという背景が考えられます。ADHDの話し方に見られる特徴については [[要リンク:ADHDの話し方の特徴]] で詳しく解説しています。

 

周りの人ができる、伝え方の工夫

会話が噛み合わない状況を改善するためには、周りの人が伝え方を少し工夫することが効果的です。

 

一度に伝えることを一つに絞る

複数の要件を同時に伝えると、情報が処理しきれずに混乱してしまうことがあります。「AとBとCをお願い」とまとめて伝えるのではなく、「まずはAをお願いします。終わったら声をかけてください」と、一つずつ段階を踏んで伝えるようにすると、相手も取り組みやすくなります。

 

結論から伝える

話の経緯から長く説明すると、途中で集中力が切れたり、何が重要なのかが分からなくなったりすることがあります。まずは「結論として、これをお願いします」「今回はこの件についての相談です」と一番重要なゴールを明確にしてから、必要な理由や詳細を補足するように意識してみてください。

 

口頭だけでなく、文字や図を併用する

耳から入る音声情報だけでは、すぐに忘れてしまったり、誤解が生じたりしやすくなります。重要な指示や約束事は、口頭で伝えた後にメモに書いて渡す、チャットやメールで文字として残す、あるいは視覚的に分かりやすい図やスケジュール表を活用するなど、目で見える形で情報を補うことが効果的です。

 

伝わっているかを途中で確かめる

説明を最後まで一気に終わらせるのではなく、キリの良いところで「ここまでは大丈夫ですか?」「今の部分で分かりにくいところはありましたか?」と、こまめに理解度を確認する時間を作ります。相手に一度自分の言葉で内容を復唱してもらうことも、認識のずれを防ぐ有効な方法です。

 

避けたい関わり方

良かれと思っての対応が、かえってコミュニケーションを難しくしてしまうこともあります。

 

話の途中で遮って言い直させる

相手の話題が飛んだり、一方的になってしまったりしたときに、「そうじゃなくて」「話をすり替えないで」と強く遮って訂正させるのは避けたほうがよいでしょう。強く否定されると、萎縮して自分から発言できなくなってしまうことがあります。話の区切りがつくのを待ってから、「さっきの件だけど」と穏やかに軌道修正を促すのが望ましい姿勢です。

 

「聞いていない」と決めつける

別の方向を見ていたり、手遊びをしていたりしても、本人はしっかり話を聞いている場合があります。表面的な態度だけで「全く話を聞いていない」「不真面目だ」と決めつけて感情的に怒るのではなく、まずは「今、伝えたことの確認なんだけど」と内容が届いているかを確認するようにしてください。

 

一度で伝わらないことを繰り返し指摘する

「前にも言ったよね」「なぜ何度言っても忘れるの?」と過去のミスを繰り返し指摘しても、特性によるものである場合は本人の努力だけで解決するものではありません。できないことを責めるのではなく、「どうすれば忘れずに済むか」「どんなメモの取り方なら分かりやすいか」という前向きな対策を一緒に考えるスタンスが大切です。

 

本人が困っている様子があるとき

会話が噛み合わないことで、周りの人が戸惑う以上に、当事者本人が「なぜかいつも怒られてしまう」「人間関係がうまくいかない」と深く悩み、自己肯定感を低下させていることがあります。

仕事や生活でミスが続き、本人が苦しんでいる様子が見受けられる場合は、周囲が一方的に問題視するのではなく、本人の抱えているやりづらさに耳を傾けることが大切です。その上で、職場であれば環境の調整やサポート体制について話し合ったり、一緒に働きやすい工夫を模索したりする姿勢が、本人の安心と状況の改善につながります。

 

相談できる場所

コミュニケーションのすれ違いや、それによる生活上の困難が大きくなっている場合は、専門機関への相談を検討することも選択肢の一つです。

大人の発達障害に関する相談先としては、各都道府県に設置されている「発達障害者支援センター」や、精神保健福祉センターなどがあります。また、日常生活への影響が大きく、不眠や気分の落ち込みといった不調が伴っている場合には、精神科や心療内科などの医療機関へ相談し、専門的な見地からアドバイスを受けることも役立ちます。

 

まとめ

ADHDの特性がある方との間で会話が噛み合わないと感じるとき、それは決して相手に悪気があるわけではなく、注意の向きやすさや情報処理の特性が関係しています。その背景にあるメカニズムを周囲が理解するだけでも、感情的な衝突や不要なストレスを大きく減らすことができます。

コミュニケーションの困難さを解消するためには、一度に伝える情報を一つに絞る、結論から話す、メモなどの視覚的なサポートを活用するといった具体的な工夫が効果を発揮します。少しの伝え方の変化が、お互いのやり取りをスムーズにすることもあります。

すれ違いが起きたときは「なぜ伝わらないのか」と相手を責めるのではなく、「どうすれば伝わりやすいか」という視点を持つことが大切です。お互いの特性を理解し合い、無理のない範囲で工夫を重ねていくことが、心地よい関係性を築くための第一歩となるでしょう。

参照:厚生労働省/発達障害の理解

 

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この記事を監修した人

中野誠子

株式会社Make Care 代表取締役社長

中野 誠子

看護師 / (元)重症心身障害児者認定看護師

精神科病棟勤務・看護学校教員として経験を積み、「こころに寄り添う看護」を志す。石森・濱𦚰とともに株式会社Make Careを創業。現在は訪問看護ステーションくるみの代表として現場に立ちつつ、メディアにも積極的に登場し、地域精神医療の啓蒙とアップデートに挑む。

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