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非定型うつ病の薬|「効いているのかわからない」と感じたときに

精神科訪問看護とは

「病院で薬を処方されて毎日欠かさず飲んでいるけれど、本当に効いている実感がない」と悩む方は少なくありません。調子が良くて活発に動ける日もある一方で、何かがきっかけとなって深く落ち込み、何も手につかなくなる日もある。そのように極端に良い日と悪い日を繰り返していると、果たして薬に効果があるのかどうか、判断そのものが難しくなってしまいます。

この記事は、いま服薬している方が「効かないから薬をやめたほうがいいのではないか」と結論を出すためのものではありません。効果や副作用について迷ったときに、自分の今の状態をどう捉え、医師とどのように相談していけばよいのかを整理するために書いています。

ご不安な気持ちが強い時や、文章を読むのがお辛い時は、無理をせず私たちにお声がけください。

精神科の専門スタッフが、あなたの状況に合わせてお話をお伺いします。まずはお気軽にご相談ください。

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非定型うつ病の治療で、薬はどう位置づけられるか

 

まず前提として、「非定型うつ病」という言葉の医学的な意味合いについて確認しておきましょう。これはアメリカ精神医学会の診断基準である「DSM-5-TR」において、独立した一つの病名として存在するものではありません。正確には、うつ病として診断される状態のなかで、「非定型の特徴を伴う」とされるケースを指す言い方です。

この状態に対する治療を進めるにあたっては、薬物療法だけが単独で行われるわけではありません。一般的に、薬物療法に加えて、精神療法、さらには生活リズムの調整といった複数のアプローチを組み合わせて進められます。薬は心身のエネルギーの土台を整える役割を担い、精神療法は考え方の癖やストレスへの対処法を見直す助けとなり、生活リズムの調整は日常の波を穏やかにするために行われます。これらが互いに影響し合うことで、全体的な回復を目指していきます。

抗うつ薬には、SSRI、SNRI、NaSSA、三環系抗うつ薬といったいくつかの分類があります。また、ご自身の気分の波の大きさや状態によっては、抗うつ薬だけでなく気分安定薬などの別の分類の薬が用いられることもあります。

これらの中からどの分類の薬をどのように使うか、あるいはどう組み合わせるかは、医師がご本人の日々の経過や症状の現れ方を総合的に見て判断します。処方されている薬について疑問がある場合は、一人で悩まずに医師に尋ねて確認していくことが、治療を納得して進めるために大切になります。

関連記事:非定型うつ病とは?定型うつ病との違い・症状・接し方をわかりやすく解説

 

 

「効いているかどうか」がわかりにくい理由

 

良い日があるから、効果と気分の波を区別しにくい

非定型の特徴を伴う状態で際立っているのが、「気分反応性」と呼ばれる性質です。これは、自分の好きなことや嬉しい出来事、楽しい予定などに接すると、実際に気分が明るく改善するという特徴です。

この特徴があるため、服薬中に「今日はなんだか気分が良い」「活動的に動けた」と感じる日があったとしても、それが薬が効いてきた結果として安定しているのか、それとも気分反応性による本来の気分の波の頂点にいるだけなのか、ご本人にも区別がつきにくくなります。薬のおかげで改善しているのか、単に良い出来事があったから調子が良いだけなのかが混ざり合ってしまうため、効果の判断が揺れ動いてしまうのです。

 

悪い日に「効いていない」と判断してしまう

調子が良い日がある一方で、ストレスのかかる出来事や負担の大きい対人場面などをきっかけにして、再び強く落ち込んでしまう日もやってきます。時には、昨日までの元気な姿が嘘のように動けなくなることもあります。

このように急激に調子が落ちた日を迎えると、ご本人は「毎日薬を飲んでいるのに全く効いていない」「結局もとの悪い状態に戻ってしまった」という絶望的な結論を出してしまいやすくなります。しかし、一日の気分の落ち込みだけを切り取って、薬の全体的な効果がないと判断することはできません。波が下がった日のつらさは本物ですが、その悪い日の調子だけを見て「この薬は無意味だ」と決めてしまうのは、急ぎすぎた解釈になってしまいます。

 

判断の材料は、1日ではなく期間の傾向

薬が効いているかどうかを考えるときには、一日の調子の良し悪しで一喜一憂するのではなく、ある程度まとまった期間の傾向を見ることが判断の材料になります。

例えば、調子が大きく崩れてしまった日から、日常生活のペースに戻ってくるまでの負担が以前と比べてどう変わってきたか、といった視点です。落ち込みの深さが以前よりわずかに和らいでいたり、一番底にいるような波に飲み込まれている時間が少し短くなっていたりすれば、それはゆるやかな変化のサインかもしれません。このように、点ではなく線で状態の推移を追うことが、気分の波が大きい状態において効果を判断する際の現実的な見方になります。

 

症状なのか副作用なのか、わかりにくいとき

非定型の特徴を伴う状態の治療において、ご本人を悩ませやすいのが症状と副作用の切り分けです。この状態に見られる特徴的な症状と、抗うつ薬をはじめとする薬の副作用には、重なるように現れるものがいくつかあります。そのため、「これは病気のせいなのか、それとも薬が合っていないせいなのか」と混乱しやすくなるのです。

 

眠気と過眠

この状態では、もともと「過眠」という症状が現れやすい傾向があります。夜に十分な時間を眠っているにもかかわらず、日中もずっと眠気が取れなかったり、体が重くて一日中横になって過ごしてしまったりする状態です。

一方で、処方される薬によっては、飲み始めや増量時に副作用として眠気やだるさが生じることがあります。もともと過眠の傾向があるところに薬の副作用としての眠気が重なると、今の強い眠気が病気の症状によるものなのか、それとも薬の影響によるものなのか、ご本人が自分自身の感覚だけで切り分けることは極めて困難になります。

 

食欲の増加と体重の変化

定型的なうつ病では食欲が落ちることが多いですが、非定型の特徴を伴う場合は逆に食欲が増し、過食気味になることがあります。ストレスを感じたときや気分が沈んだときに、食べることで無意識に気持ちを落ち着かせようとする反応が起きやすいのです。

これに加えて、薬によっては副作用として食欲の増加やそれに伴う体重の変化が見られる場合があります。もともとの過食の症状と薬の副作用が重なると、コントロールできないほどの食欲が生じることがあります。体重が変わることはご本人の強い自己嫌悪や焦りにつながりやすく、治療へのモチベーションを低下させかねない苦しい問題となります。

 

迷ったときは、切り分けようとしなくてよい

このように、症状と副作用が似た形で重なって現れる場合、ご自身で「これは症状だ」「これは副作用だ」と原因を特定しようと思い悩む必要はありません。無理に切り分けようとすればするほど、不安が大きくなってしまいます。

迷ったときにできるのは、ご自身に起きている事実をそのまま記録しておくことです。いつから眠気や食欲の変化が強くなったのか、どのようなタイミングでそれらが現れるのかをスマートフォンや手帳にメモして残し、診察の際に医師に伝えてください。原因を特定し、薬の調整が必要かどうかを客観的に判断するのは医師の役割です。

 

飲み始めの時期に気をつけたいこと

抗うつ薬などによる治療を開始してしばらくの間は、心身の変化に対して特に慎重に向き合う必要があります。薬を飲み始めた時期や、薬の種類・量が変わったばかりの時期には、一時的に強い不安を感じたり、そわそわして落ち着かなくなったりすることがあります。

これは体が新しい薬に慣れる過程で起こりうる反応の一つです。しかし、ご本人にとっては「薬を飲んだのにかえって具合が悪くなった」「もっとひどい状態になってしまった」とパニックになりやすい時期でもあります。この時期は、自分一人で抱え込まずに、ご家族などの周囲の人や医療者に状態を共有しておくことが支えになります。

「飲み始めは不安定になりやすいかもしれない」とあらかじめ周囲と共有しておくことで、いざというときに助けを求めやすくなります。もしも不安や落ち着かなさが強く、自分では耐えられないと感じたときは、無理をして次の予約日を待つ必要はありません。つらさが強いときは、遠慮せずに医療機関に連絡し、今の状態を伝えて指示を仰いでください。

 

「効かない」と感じたときにすること

自己判断でやめない

「飲んでも効いていない気がする」「副作用ばかりでつらい」と感じたとき、自分の判断で薬を減らしたり、飲むのをやめたりすることは避けてください。

処方された薬を急に中断すると、体調が急激に不安定になったり、心身に新たな不調を引き起こしたりする場合があります。薬を減らしたい、あるいはやめたいと強く思ったときこそ、その率直な気持ちをそのまま医師に伝えることが、安全に治療を進めるための対処法となります。

 

医師にどう伝えるか

医師に相談する際、ただ「薬が効きません」とだけ伝えても、どのような点でそう感じているのかが具体的に伝わりにくいことがあります。

よりスムーズに状況を共有するためには、以下のようなポイントを整理して伝えると役立ちます。

  • いつごろから、どう変わったか(変わらなかったか): 飲み始めてからの気分の推移や、つらい状態が全く変わっていない事実を伝えます。
  • 良い日と悪い日の割合が変わったかどうか: 気分反応性による気分の波が、以前と比べてどのように推移しているかを伝えます。
  • 気になっている体調の変化: 眠気、食欲、体の重さなど、日常生活に支障をきたしている変化を具体的に挙げます。

 

言い出しにくいと感じるとき

非定型の特徴を伴う状態では、「拒絶過敏性」という傾向が背景にあることが少なくありません。他者からの批判や拒絶に非常に敏感になっているため、「効いていないと言ったら医師に否定されるのではないか」「文句を言うわがままな患者だと思われるのではないか」と過剰に不安になり、本当の気持ちを伝えられないことがあります。

しかし、「効いている実感がない」「薬を変えたい」と伝えることは、決してわがままな要求ではありません。今後の治療方針を調整していくための、非常に有益な情報です。遠慮して黙っているよりも、不安に思っている事実を医師に伝えてください。

 

 

市販薬で対応できるのか

「処方薬が効いている気がしないから、自分で買える薬でどうにかしたい」と考える方もいらっしゃるかもしれません。しかし、うつ病の治療を目的とした市販薬はありません。

ドラッグストアやインターネットなどで、気分を落ち着かせるとうたうサプリメントが販売されていたり、海外から医薬品を個人輸入できるサイトがあったりします。しかし、これらには成分や品質が安全に確認できないものが含まれています。さらに、現在処方されている薬と一緒に飲んだ場合、どのような相互作用や悪影響が起こるか予測がつきません。

もし現在、市販の薬やサプリメントをすでになんらかの形で使っている場合は、ご自身を責める必要はありません。ただ、安全な治療のために必ず次回の診察で医師に伝えてください。

 

薬を使わない選択について

治療を続けるなかで、「できれば薬を使わずに治したい」「これ以上薬に頼りたくない」と感じることもあるでしょう。薬に対する不安や抵抗感を抱くこと自体は、決して間違った感情ではありません。

しかし、薬を使うか使わないかという方針を、ご自身の判断だけで決定することはリスクを伴います。薬を使いたくないという希望がある場合は、その思いを医師にしっかりと伝え、今後どのように治療を進めていくかを一緒に検討していくものです。

また、規則正しい生活や適度な休息といった生活面の工夫は、心身の土台を整えるうえで意味があります。しかし、これらはあくまで治療を支えるためのものであり、完全に薬の代わりになるものではありません。ご自身が安心できる選択肢を見つけるためにも、まずは主治医と率直に話し合う時間を持つことが助けになります。

関連記事:非定型うつ病の人への接し方|「昨日は元気だったのに」が禁句になる理由

 

飲み忘れ・飲み合わせで困ったとき

毎日薬を飲んでいると、つい飲み忘れてしまうことがあります。そのようなときに焦って、「忘れた分を取り戻そう」と自己判断で2回分を一度に飲むようなことは絶対に避けてください。飲み忘れた際の適切な対応は、薬の種類や飲むタイミングによって異なります。対応に迷ったときは、自己流で解決しようとせず、薬を処方された医療機関や調剤した薬局に問い合わせるのが確実です。

また、風邪をひいたときなど、他の科を受診して薬を処方されたり、市販の薬を飲んだりすることもあるはずです。そのような飲み合わせの確認を安全に行うためにも、お薬手帳は常に1冊にまとめておくことをお勧めします。

飲み忘れが頻繁に続いてしまうと、「自分は治療にきちんと向き合えていない」とご自身を責めてしまうかもしれません。しかし、飲み忘れ自体を責める必要はありません。飲む回数が多い、タイミングが合わないなど、現在の処方がご自身の生活スタイルに合っていない可能性があります。続けやすい方法がないか、医師や薬剤師に相談して調整を図っていくことができます。

関連記事:非定型うつ病の治し方は?回復に向けて生活のなかでできること

 

よくある質問

  1. 薬はいつまで飲み続けるのですか? 薬を続ける期間は、ご自身の状態や回復の経過によって大きく異なります。一律にいつまでと決まっているものではなく、医師が定期的な診察を通じて見極めて判断します。焦らず、目の前の経過を医師と共有し続けるようにしてください。
  2. 副作用が心配で飲み始められません。 薬に対する不安があるのは自然なことです。しかし、心配を抱えたまま自己判断で飲まずにいるよりも、その不安そのものを診察で医師に伝えてみてください。不安に配慮した処方の調整や、飲み方の相談につながります。
  3. 調子が良い日は飲まなくてもいいですか? 調子が良い日だけを基準にして服薬を中断することは避けてください。気分の波がある状態でも、薬は決められたペースで飲み続けることが前提になっています。自己判断で飲まない日を作らないようにしてください。
  4. 薬で性格が変わってしまいませんか? 薬は性格そのものを作り変えるものではありません。ただし、服用後に感覚が変わったと感じるなど、気になる変化があれば、その内容を医師に伝えてください。感じ方の変化は、治療を調整するうえで診察で扱える大切な情報です。

 

まとめ

非定型の特徴を伴う状態では、日々の気分に激しい波があるため、薬の効果が出ているのかどうか、ご本人には非常に判断しづらいという難しさがあります。良い日もあれば悪い日もあり、その波に翻弄されて不安になるのは無理のないことです。

しかし、「効いていない」「やめたほうがいい」とご自身で結論を出してしまう必要はありません。迷ったときや副作用との見分けがつかないときは、日々の経過をありのままに医師に伝えることが、治療という共同作業の一部になります。ひとりで判断して抱え込まず、気になることは医師と相談しながら、少しずつご自身に合った治療のペースを見つけていってください。

 

ひとりで抱え込まないでください。私たちがそっと寄り添います。

ご家族やご本人だけで抱え続けることの苦しさを、私たちは知っています。

「少し話を聞いてほしい」だけでも大丈夫です。まずはお気軽にご相談ください。

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※訪問は20時まで
対応させていただいております。

 

参照:MSDマニュアル

 

この記事を監修した人

中野誠子

株式会社Make Care 代表取締役社長

中野 誠子

看護師 / (元)重症心身障害児者認定看護師

精神科病棟勤務・看護学校教員として経験を積み、「こころに寄り添う看護」を志す。石森・濱𦚰とともに株式会社Make Careを創業。現在は訪問看護ステーションくるみの代表として現場に立ちつつ、メディアにも積極的に登場し、地域精神医療の啓蒙とアップデートに挑む。

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