緘黙症(かんもくしょう)とは、不安障害などの精神疾患や、ストレスによって生じるコミュニケーション障害の一種です。
緘黙症の症状や適切な接し方を理解することで、日常生活や社会復帰など、包括的なサポートが可能です。
この記事では、緘黙症の方に対する接し方のポイントや看護について解説します。さらに、訪問看護に焦点を当てた、緘黙症の患者さまへの関わり方についてもご紹介します。
接し方に注意が必要な「緘黙症」とは
緘黙症とは、特定の場面で言葉を発することが難しくなる、精神疾患の一種です。家の中など安心できる場所では話せますが、職場や学校などの特定の環境では話せなくなってしまうのが特徴です。
発達障害や精神疾患が関係するとされており、一部の場面で症状が出ることから「場面緘黙症」とも呼ばれます。
緘黙症は子供のころに生じやすいとされていますが、青年期以降にも見られることがあります。周囲からは「わざと喋らない」と誤解され、症状を理解されずにつらい思いをすることもあるでしょう。人によっては、仕事や学業など社会活動に支障をきたし、治療や支援が必要となる場合があります。
緘黙症の方に対する接し方のポイント
緘黙症の方との接し方にはいくつかのポイントがあります。
ここでは、実際に緘黙症の方と接する際に意識すべきポイントを解説します。
話すことを強要しない
緘黙症の方と話すときは、喋ることや意思表示を強要しないよう注意しましょう。本人は話したくても話せない状況であるため、無理に話すことを求めると不安を煽り、余計に会話しにくくなる恐れがあります。
時間はかかりますが自分のペースで会話するよう促し、ゆっくりとコミュニケーションをとることが大切です。
クローズドクエスチョンを心掛ける
クローズドクエスチョンを心掛けることで、言葉を発せなくともコミュニケーション取りやすくなります。対してオープンクエスチョンでは、回答の選択肢が多くなってしまい、うまく話せない原因となってしまうことも。
YESかNOで返答できるクローズドクエスチョンを心がければ、うなずきや首振りなどでやり取りでき、スムーズな意思疎通が可能となるでしょう。
優しい言葉遣いと態度で接する
やさしい態度や言葉遣いにより、不安やストレスを感じさせないようにすることも大切です。
テンポの速い会話や責め立てるような口調では、ストレスや不安を感じ、言葉を詰まらせてしまう可能性があります。柔らかい表情や言葉遣いを意識して、緘黙症の方に安心感を与えるように心がけましょう。
参照:厚生労働省科学研究成果データベース/場面緘黙症の実態把握と支援のための調査研究(中村和彦)
訪問看護師が緘黙症の方にできること
緘黙症の方と関わる機会は、病院だけではありません。
ここでは訪問看護師に焦点を当て、緘黙症の方に対してできることを解説します。一人ひとりの症状や生活環境などを把握して、その人に合った看護計画や支援を検討・実施することが大切です。
コミュニケーション方法の提案
まずは、緘黙症の方がコミュニケーションを取りやすくなる方法を提案しましょう。
口で言葉を発するのが難しければ、以下の方法もおすすめです。
・筆談でのやり取り
・スマートフォンやタブレットなどの活用
・イラストの使用
患者さま一人ひとりに合ったコミュニケーション方法を提案することが大切です。
関連記事:【精神科訪問看護師が解説!】精神疾患を抱える方への重要な看護師のコミュニケーション方法とは?
環境調整
緘黙症の方がストレスや不安を軽減できるよう、生活環境を調整することも有効です。
ストレスの原因となる刺激や負担を減らしたり、周囲へのサポート体勢を整えたりなど、緘黙症の原因となる問題を改善できる働きかけが求められます。
そのためには、まずなにがきっかけで話しにくくなるのかなどの情報を集める必要があるでしょう。
社会復帰への支援
緘黙症の方が就労したり社会復帰できるよう支援するのも、訪問看護師としての大きな役割の1つです。
就労支援や外出の同行などにより、緘黙症の方が社会復帰できるようサポートします。必要な場合は精神障害者福祉手帳の取得も促し、日常生活が送りやすくなるよう手助けしましょう。
家族に対するケア
緘黙の方と一緒に暮らす家族の中には「家庭環境のせいである」と、自分を責めてしまう方もいます。緘黙は周囲の環境だけでなく、本人の性格や気質が原因となる可能性もあると伝えてあげましょう。
一方で、ご家族の協力は緘黙症の治療に大きく貢献できます。緘黙症を改善するためには、会話できる場面を増やすことも有効であるため、家族と本人が協力して治療に向き合えるようサポートすることが大切です。
関連記事:家族看護は看護師に重要なスキル!訪問看護師に必要な家族看護の考え方
緘黙症の方への接し方を理解しサポートしよう
緘黙症とは、人前でうまく話せなくなってしまう状態を指します。中には、学業や仕事だけでなく日常生活にも支障が生じるケースもあります。
看護師は、緘黙症の方に対する適切なコミュニケーションの方法を理解し、一人ひとりにあった看護や支援を考えることが大切です。
訪問看護師として緘黙症の方をサポートする場合には、周囲の環境やご家族への配慮や理解が求められます。緘黙症の看護についてより深く知りたい方は、『訪問看護ステーションくるみ』で一緒に働きませんか?こちらから、お気軽にお問い合わせください。