コミュニケーションで大事なのは、傾聴・共感・受容といわれています。そのなかでも傾聴は看護師に必須のスキルとされており、高齢化が進む現在、介護や福祉の現場でも需要が高まっているスキルの1つです。
この記事では、傾聴の定義や効果などを解説します。
さらに、傾聴技法や傾聴力を高めるコミュニケーションのポイントも紹介していますので、ぜひ最後までお読みください。
看護師におけるスキル「傾聴とは」
傾聴とは、相手の話に注意深く耳を傾けることを意味します。その中でも看護師における傾聴とは、信頼関係を築いていくために「相手の感情や思考に共感し、相手の自己表出を促していく行為である」とされています。
相手を評価したり指導したりするような聴き方ではなく、相手を受容し安心感を与える聴き方を意識するのが大切です。
看護師による傾聴の効果
看護師による傾聴の効果は、以下の3つです。
・信頼関係が構築できる
・自己理解・自己受容が進む
・カタルシス効果が得られる
誠実に相手に対応する傾聴は「不安や悩みを話してもよい人」という安心感を与え、信頼関係の構築につながります。そして安心感持って話すことで、相手は会話の中で自分の気持ちや考えに気づけ、自己理解と自己受容が進むでしょう。
ネガティブな感情を口に出して苦痛が緩和される状態を「カタルシス効果」といいます。信頼関係が構築できていると、相手からネガティブな感情も引き出せるでしょう。
傾聴の3原則
次は、傾聴の3原則について解説します。
1.共感的理解
2.無条件の肯定的関心
3.自己一致
「共感的理解」とは、相手の立場に立って共感しながら話を理解しようとする姿勢です。「無条件の肯定的関心」は、相手の話を善悪や好き嫌いの評価を入れずに聞き、その話の背景に肯定的な関心を持って聴くこととされています。
「自己一致」は、聴き手は相手に対して誠実であるとともに、自分の気持ちにも誠実に対応することです。もし相手の話がわかりにくいときは、聴きなおして内容を確かめてみましょう。
看護師に必要な5つの傾聴スキル
ここでは、看護師に必要な傾聴技法を5つ紹介します。
技法 | 特徴 |
姿勢 | 穏やかな表情と清潔感のある服装は、相手に安心感を与えられます。
腕や足を組むといった横柄な態度や、拒絶感を与える姿勢は控えましょう。 |
単純受容 | 「うなずき」「あいづち」「繰り返し」をして、聴いている姿勢を示します。
相手の話をさえぎらないのがポイントです。 |
事柄・感情への応答 | 事柄的・感情的な表現を聞き取り、それを言い換えて返答します。
相手は自分の話や感情を理解してくれたと知り、安心できます。 |
要約 | 長い話を簡単に要約して返答します。
これにより相手が考えをまとめ、自分を見つめ直すサポートができます。 |
質問 | 相手が自由に回答できるオープンクエスチョンを心がけます。
聴き手が相手に関心を持っていることを示し、相手は自己理解が深まります。 |
患者さまは、気軽に話せない思いや遠慮、相談しにくい背景を抱えている場合があります。相手に姿勢や態度で安心感を与えるとともに、事柄・感情への応答や要約、質問を行うことで、話に関心があると示せるため信頼関係が築きやすくなるでしょう。
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傾聴力を高めるコミュニケーションの3ポイント
最後に、傾聴力を高めるコミュニケーションのポイントを3つ紹介します。
相手を理解し尊重する
相手の話をしっかりと聴き、相手の価値観や意見を否定しないことが大切です。相手を思いやる気持ちは自然と姿勢や態度、表情など非言語的コミュニケーションとして現れます。
相手を受容し、安心感を与える聴き方を心がけましょう。
ミラーリングやバックトラッキングを意識する
ミラーリングとは、相手と同じしぐさや表情をすることです。安心感を抱いたり信頼関係を形成したりすることにつながります。
バックトラッキングとは、言葉や感情を言い換えたり要約したりして返答する手法です。相手の話を聴いていることを示し、相手に自分が発した言葉を再認識してもらうために行います。「相手に自分の話を理解してもらえている」との認識を与えられるでしょう。
オープンクエスチョンを心がける
質問するときは、相手が自分の気持ちを自由に答えられるよう、開かれた質問を意識しましょう。
5W1Hの質問をすることで、より具体的な話を引き出せるだけでなく、聴き手も相手自身も解決すべき問題を明確にできます。ただし、うまく自分から話し出せない患者さまに対しては、「はい」「いいえ」で答えられるクローズドクエスチョンも効果的です。
看護師は傾聴を用いたコミュニケーションが大切
看護師における傾聴とは、単なるコミュニケーションの手段ではなく、相手を全人的に理解しようとし、信頼関係を築くための行為です。傾聴技法やポイントを押さえたコミュニケーションを意識することで、相手に安心感を与えられるでしょう。
傾聴スキルは、病院だけでなく訪問看護でも大いに役立ちます。特に精神科領域では、傾聴が必要となる場面が多くあるでしょう。在宅医療に携わりながらスキルを身につけたい方は、『訪問看護ステーションくるみ』で一緒に働きませんか?興味のある方は、こちらからお気軽にお問い合わせください。