大阪市全域を訪問区域とする『訪問看護ステーションくるみ』の代表、濱脇直行が綴る『専務エッセイ』第81弾!
最近はめっきり暑くなりましたね。
今年は例年より早く梅雨が明け、すっかり夏らしくなりました。
こうも暑くなると、訪問で使う車の中は大変なことになります。先日も30分ほど車を停めていただけで、車内温度は50度を超えていました。ハンドルも熱くて、すぐには触れないほどです。
訪問する側にとっても、これからが過酷な季節です。皆さんも体調には十分気をつけてお過ごしください。
こんにちは。専務の濱脇です。
今回は、訪問看護における「自宅」という場所について書いてみたいと思います。
大阪市、寝屋川市、守口市、
門真市、大東市、枚方市、吹田市、尼崎市全域対象
“精神科に特化”した
訪問看護ステーション
「くるみ」
平日・土曜・祝日 9:00〜18:00
【日曜・お盆・年末年始休み】
※訪問は20時まで
対応させていただいております。
「自宅」は利用者さんのホーム
精神科訪問看護に限らず、訪問看護や居宅支援では利用者さんのご自宅へ伺うことが基本になります。
改めて考えてみると、他人の生活空間に入り、その人の暮らしに関わるというのは、とても特殊な支援環境ではないでしょうか。
そこには訪問看護ならではの魅力があります。
一方で、簡単には答えの出ないジレンマもあります。
私は以前にもお話ししたように、病院出身の看護師です。
今では新卒から訪問看護へ進む方も増えましたが、私が新人だった頃は、まず病院へ就職することが当たり前でした。
病院を看護師の立場から表現するなら、病院が「ホーム」、患者さんが「アウェイ」です。
医療機器や人員が整い、安全な環境の中で医療が提供されます。看護師にとっても、比較的仕事を進めやすい環境です。
ところが、在宅医療や訪問看護では、その関係が大きく変わります。
玄関の向こう側は、利用者さんのお城です。
そこには、その人が歩んできた人生や価値観、習慣、こだわりが詰まっています。
利用者さんが「ホーム」であり、私たち看護師は訪問させていただく「アウェイ」の立場になります。
ここが訪問看護の魅力であり、難しさの始まりでもあるのです。
正しさだけでは支えられないことがある
病院では「患者さん」として接していた方が、自宅では一人の生活者として目の前にいます。
もちろん専門職としての境界線はあります。
しかし、自宅という生活空間では、その境界線がグラデーションのように曖昧になることがあります。
親戚のように感じてもらったり、近所の人のように話しかけてもらったり、お茶を出してくださる方もいます。
その場その場で、距離を近づけるべきか、少し距離を置くべきか。
何が適切なのか迷う場面は少なくありません。
さらに精神症状などの影響で生活が乱れている場合、そのジレンマはより大きくなります。
例えば、セルフネグレクトに近い状態で、部屋が物であふれ、足の踏み場もないような状況だったとします。
衛生面や安全面だけを考えれば、「片付けましょう」と声をかけることが正しいようにも思えます。
しかし、それが必ずしも本人にとっての正解とは限りません。
自宅は利用者さんにとって安心できる場所です。
周囲から見れば乱れているように見えても、本人にとっては物の配置や部屋の状態そのものが安心につながっていることもあります。
支援者が良かれと思って環境を変えたことで、その安心感を失わせてしまう可能性もあります。
一方で、そのまま何もしなければ、転倒や火災、健康被害などのリスクが高まることもあります。
生活を尊重すること。
安全を守ること。
その両方を考えながら支援していくことが、私たちに求められているのだと思います。
答えを急がず、その人らしさに寄り添う
その人にとっての最善の答えは、一人ひとり違います。
だからこそ、利用者さんと丁寧にコミュニケーションを重ね、「何を大切にしているのか」「何に不安を感じているのか」を知ろうとすることが大切です。
私たち看護師自身も、
「これは本当に本人のためなのか」
「支援者側の価値観を押し付けていないか」
そう自問自答を繰り返しながら関わっていく必要があります。
慎重になりすぎて何もできないのも違います。
だからといって、正しさを急ぎすぎることで関係性や安心感を壊してしまうこともあります。
こうした葛藤こそが、看護そのものなのかもしれません。
訪問看護では、すべてを完璧に解決することはできません。
私たちは利用者さんの生活にお邪魔しています。
だからこそ、病院では見えなかった生きづらさや不安だけでなく、その人が持つ強さや、生きようとする力にも出会うことができます。
私は訪問看護の仕事を通して、答えを急がず、専門職としての境界線を大切にしながら寄り添い続けることの難しさを日々感じています。
それでも、その揺らぎの中にこそ、マニュアルだけでは見つけられない、その人らしい回復へのヒントがあるのだと思っています。
さいごに
弊社のスローガンは「回復がゴールではなく、活躍がスタートになる訪問看護」です。
玄関を開けるたび、そこには一人ひとりの人生と、一筋縄ではいかない物語があります。
悩み、自分の無力さにため息が出る日もあります。
それでも、その人が再び自分らしく活躍できるように、背中を押したり、ときには隣を歩いたりすることはできます。
これからも答えを急がず、悩みながら、考えながら、一人ひとりの生活に伴走できる訪問看護でありたいと思います。
今日はこの辺で。